フラット補正3つの疑問
最近、ブログやホームページ等でフラットフレームによるフラット補正が話題になることが多いですね。実はほんまか、やったことないのです。やってみようとは思うのですが、いざ、やろうとすると、いろんな方法があって、どれが一番いいの?と思って、わけが分からなくなってしまうのです。第一にフラットフレームってどうやって撮ればいいの? 青空、モニタ? ISO感度は? いろいろ悩んでしまうのですね。
で、私のフラット補正に関する疑問をまとめて見ました。
1 フラットフレームってどうやって撮ればいいの?
よく、パソコンのモニタや、ELパネルを使って、撮影しているのを見かけますが、私、あれ不思議に思っていたのです。周辺減光やケラレは光束の直径に依存するので、無限遠からの光でかつピントが合っていないと意味ないような気がして。しかし、実際にやっている人の結果を見るとそこそこ合っているようです。なんで? と、ずーっと思っていたのですが、昨日よっちゃんさんのブログでフラット補正が話題になっていたので、もう一度よーく考えて見ました。そしたら、いちおう、自分なりの結論を得ました。「無限遠でも近距離でも同じ」ということです。これについては後で説明します。
2 カラーフラット補正って何?
これが一番よく分からないです。なぞです。色ムラがとれるらしいです。でも、そもそも色ムラってなに? 光害カブリやLPS-P2フィルターによる色ムラなら分かります。それ以外に色ムラってあるの? 確かに画像をいじっていると色ムラって若干あるようにも思えます。ただ、これはCCDやC-MOS固有のもので、光学系には関係ないんじゃないの? 光学系依存の色ムラなんてあるの? だから色ムラだけをとるなら、ダーク同様、光学系はいらないはずでは? それとも、わざわざ周辺減光と色ムラを分けるのは面倒だから、一緒に色ムラもとってしまおうということ? それなら分かる気がします。でもそれなら分けた方が正確なのでは?
3 その他の条件はどうするの?
ISO感度はどうするの? 露出時間は? CCD固有の色ムラもとるなら、撮影時と同じ条件でないとまずいですよね? さらに言えば露光量も同じでないとないと。うーん。そもそも色ムラが分からないので、よく分からないです。
と、まぁ疑問だらけなので、未だにフラット補正やる気ないのですが、「理屈で考えるより、やってみろ!」と言われそうです。その通りですね。単にめんどくさいだけです。
さて、疑問1に関しては自分なりに納得しました。何で近接光でも大丈夫なのかと。
まず、ケラレや周辺減光がおきる理由を次の図で表してみました。
無限遠からくる光がCCDの一点に集まる様子です。黒いのが鏡筒やミラーによるケラレ、周辺減光です。この図を見れば分かるようにピンボケだと、ケラレ量も変わってきます。それで疑問に思っていたのです。
それでは、近接光ではどうか?図にしやすいようにレンズから焦点距離と同じところに光源があるとします。これだとレンズを通過したあと平行光束になります。これは図にしやすいようにそうしただけで、平行である必要はありません。
CCDにはピンボケの像があたります。CCDの一点に注目すると、一方向からはたった一本の光線しかあたりません。ですからケラレ要因があると光が当たるか、当たらないかのどちらかです。0か1です。この状態で写真を撮れば、円形写野写真のように真ん丸い像が撮れますが、そうはなりません。
なぜなら、CCDのある一点に注目すると、レンズにいろんな角度から入る光線が重複して当たるからです。
一方向からの光線がケラレたとしても、他の方向からの光線が当たるので、真っ暗にはならないのです。これが無限遠との違いです。無限遠の場合は、CCDの一点に当たる光は一方向に限られます。これは当然です。そうでないと像がボケボケになります。
次に問題になるのが、それではCCDの一点に当たる光は、レンズ全体を通過した光かどうかです。もし、これがYESなら無限遠と同じになります。そうではなくレンズの一部分を通過した光だけがCCDに当たるなら無限遠と同等とはいえません。
もし、レンズにフードがなければ、レンズにはすべての方向から光が入るので、CCDの一点に集まる光はレンズ全体を通過した光です。レンズにフードがある場合はどうか。
この場合も答えはYESです。というのは、レンズフードはレンズの焦点距離(=拡大倍率)とCCDのサイズで決まる画角の範囲内では少なくとも無限遠からの光に対してはケラレないです。(当たり前ですね。) 下の図見てね。
無限遠でケラレないなら近接光でもケラレません。
なぜなら、無限遠でも、近接光でもレンズとCCDの距離は同じなので、拡大率が同じということです。たとえ、ピンボケでも拡大率は同じです。拡大率が同じなら、CCDの隅っこにあたる光線の光路は無限遠とまったく同じはずです。ですから無限遠でフードによるケラレがなければ近接光でもケラレません。
ということは、CCDの一点に集まる光はレンズ全体を通った光だといえます。(たとえピンボケでも)
ということは、これは無限遠の場合と同じです。無限遠の場合もレンズ全体を通った光が一点に集まります。
この図のレンズの右側だけを見て、無限遠からの光か近接光の光か判断できますか?できないと思います。
無限遠の場合は一方向から来るたくさんの光線を集めるのがレンズの仕事です。
近接光の場合は、いろんな方向から来る光線を集めるのがレンズの仕事です。
この違いはありますが、一度レンズを通過してしまえば、両者はまったく同じです。
同じなら、同じようにケラレるはずですから、近接光でフラットフレームを撮影してもまったく同じ結果が得られるはずです。
レンズを通過してしまえば光学的にはまったく同条件ですから、途中にレジューサーがあっても、カメラレンズのように絞りや後玉があっても何も問題ないです。さらに、色による屈折率の違いも両者でまったく同条件ですから何も問題ないです。また拡散光でも同じです。とにかく、レンズに降り注ぐ光を一点に集めると言うレンズの仕組みを考えれば無限遠でも近接光でも同じことです。(近接光の場合はピンボケですから一点に集まるという表現は良くないですが、レーザービームのような光線を考えれば分かると思います。)
ただ、ここで重要なのは、次の条件が満たされていないといけないです。
近接光の光源は一様であること(当然ですね。)
CCDの位置は無限遠と同じであること。つまり、無限遠でピントが合った状態でフラット撮影しなければいけません。
まぁ、当然と言えば当然の結果でしたかね。すみません。難しい話しにしてしまって。冷却D40がんばります。
| 固定リンク
コメント
ほんまかさん、始めまして。すばらしい工作記事、検証記事をいつも興味深く拝見しております。
今回のフラットの考察、とてもためになりました。私は何となく撮影時と同じ無限遠で撮影していたのですが、それが絶対条件だったのですね。理論的に説明してくださりよく分かりました。ありがとうございます!
実は私の実験で近接光(ELパネルやモニター)の場合LPS-P2を付けると撮影したフラット画像にむらが出ました。スカイフラットの場合出ないので、これはおそらく入射光の角度の違いから来たものですね。
色むらの問題なのですが、これはライトフレームのバックグラウンドにある色むらのことではありません。それをフラットで取ることはできないと思います。
そうではなくて光源と撮影した画像の色を合わせないと新たな色むらを作ってしまうようなのです。
そのため私もフラット補正をやっていませんでした。
この新たに出来る色むらはRGB各々の照度差から来ているらしく、それをフィルターでそろえてあげれば回避できるようなのです。
とはいえ、光害かぶりなどは除去できるわけではないので、仰るとおりあまりフラット補正にこだわる意味も無いのかもしれませんね。
長々と申し訳ありませんでした。これからも楽しく拝見しております。
投稿: T-Fix | 2008年2月28日 (木) 15時33分
T_Fixさん。始めまして。
いつもよっちゃんさんの理論のやさしい解説と、具体的な実践例でほんといつも助かっております。
それから、天体写真の腕前は凄いですね。よっちゃんさんの作品とほとんど同じレベルですね。
色ムラのことですが、
そうだったんですか。色ムラをとるのではなく色ムラが出ないようにするんでしたね。いや、とんだ勘違いでしたね。お恥ずかしい。
確かに色バランス合ってないと、どれかの色が過補正になってしまいますね。そう考えると、奥が深いですね。
ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
投稿: ほんまか | 2008年2月28日 (木) 17時59分