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2008年3月21日 (金)

天文屋のための電子工作

お月様が明るい。こんな暇な時期は楽しい電子工作で過ごそう。ということで新連載開始、満月期の暇つぶし企画です。というより、これ一回で終わってしまうかも知れない。

いちおう、予定しているのは、電源の製作。タイマーリモートシャッターの製作。モータードライブの製作などなどです。基本的に、よほど暇でない限りやりません。早くやれー!という方はコメントにて。

最初はヒーターコントローラーの製作です。実は、冷却D40作った時の部品が余ったので、それでこしらえたのですが、ちょい工作にはちょうど良いです。

基本的なこと

ヒーターの発熱量をコントロールするには、3つの方法があります。まず、可変抵抗(ボリューム)で抵抗値を変えることです。しかし、1Aとか流れますので、電子工作用の小さな可変抵抗は使えません。また発熱もしますので、損失が大きいです。

次は、電圧を変えることです。電圧可変式のスイッチング電源などで、電圧を変えます。スイッチング電源でない場合は損失が大きいので、普通はスイッチング電源を使います。私も以前はこの方式でした。しかし、いくつか問題があります。1 電圧範囲が限られること。2 装置が大きくなること。3 発熱量は電圧の2乗に比例しますのでリニアでないこと。4 スイッチング電源でも10~30%くらい損失があること。

そこで、これらの問題を解決したのがPWM制御です。モータなどのパワーコントロール系によく使われます。ようするに下図のようなパルスを出力して、ヒーターを高速でON/OFFさせるのです。ONの時間とOFFの時間を変えて、発熱量を調節します。理論上は、発熱量を0~100%の範囲で調整でき、しかもリニアです。損失も非常に少ないです。

Pwm1

欠点は、高速でON/OFFを繰り返しますので、ノイズの発生源になりえることです。ただ、これはスイッチング電源でも同じです。(電源については次回)

今回はタイマーIC555でパルスを発生させ、MOS FETと呼ばれる素子で、ヒータの電流をON/OFFします。

タイマーIC 555は、電子工作の王様です。子供向けの電子工作本に必ずといっていいほど出てきますね。応用しだいで、いろんなことができます。

回路図

Pwm2

この回路は応用範囲が広く、CPUのファンコントローラとほぼ同じです。またそっくりそのままペルチェ素子のコントロールにも利用できます。難しいことはおいといて、とりあえずこの通り作れば動きます。LEDは出力に応じて明るさが変わります。

回路の説明

47μの電解コンデンサ。コンデンサは電気を貯めておくものですが、急激な電圧の変化をならす働きがあります。そのため電源投入時のサージやノイズをとることができます。電解コンデンサは極性があり、マイナスはマイナスのマークがあり、かつプラスのリードが長いです。

0.1μのコンデンサ。コンデンサは交流成分を通すためプラスとマイナスをショートするように入れると、交流成分つまりノイズを取ることができます。このような使い方をするコンデンサをパスコンといい。ICのそばに入れるのが基本です。0.1μのコンデンサは表面に104と書かれています。

555。 タイマーIC555は、コンデンサC1に充電と放電を繰り返すことにより三角波形を作り、内臓のコンパレータというものでデジタルパルスに変えます。充電時は右側のダイオードを通り充電されます。充電時間は抵抗RとコンデンサCの積に比例します。放電時は左側のダイオードを通り放電されます。放電時間もRとCの積に比例します。したがって、可変抵抗で充電時間、放電時間を変えることにより、ON/OFFの時間をコントロールできます。

ダイオード。役割は上記で説明したとおりで、一方向にしか電流を流さない特徴があります。極性がありますので注意してください。

LED。出力比率を見るためにLEDを挿入しました。LEDは電流を20mAくらい流すようにするのが基本です。LEDの両端の電圧は電流によらず一定でだいたい2Vくらいです。ですから、LEDと直列にある抵抗値は次のように求まります。

R = V / I = (12V-2V)/20mA = 500オーム

MOS FET。 ゲートと呼ばれる端子がだいたい4V以上になると、ドレイン、ソースという端子間に電流が流れます。この性質を使って、ヒータをON/OFFします。MOS FETはNチャンネル型とPチャンネル型の2種類ありますが、上の回路図なら必ずNチャンネルを使うようにしてください。

可変抵抗(ボリューム) ボリュームは指数関数的に変化するAカーブと直線的に変化するBカーブがあります。Bカーブを選択します。

製作

まず部品をそろえます。ほとんどすべて秋月電子で購入できると思います。

Pwm3

最初は、基板のカットから

Pwm4

次にケースの穴あけ。なに?ドリルがない? 綺麗な天体写真を撮りたいならドリルの一つや二つ。。。

Pwm5

次に基板の製作ですが、最初に抵抗などのリードの切れ端で電源ラインを配線します。電源ラインのレイアウトが良いとその後の結線が楽になります。ここは経験ですね。

Pwm6

電源ラインができたら後は部品を取り付けていきます。MOS FETのリードは根元から曲げないように。

Pwm7

裏側はこんな感じ。

Pwm8

ケースに入れて、ボリュームやLEDをつけます。

Pwm9

完成です。

Pwm10

実はコンデンサC1の容量を一桁間違えてパルス周期が29Hzになってしまって、LEDが点滅しているのが分かるようになってしまいました。ほんとは288Hzにしたかったのですが、288Hzなら点滅は分からないと思います。でも点滅が分かった方が分かりやすくてよいかも。

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コメント

ほんまかさん、はじめまして。
そして、あけましておめでとうございます。

私、年末年始休みに「ほんまかさん」の記事を参考にヒーターコントローラーを作成しました。(資料ありがとうございます。<(_ _)>)
完成はしたものの少し動作に疑問があるのでご教授を願えれば幸いと思いコメントいたしました。
1.ヒーターが熱すぎる気がする(手で持ち続けられない)
2.VRを動かしてもヒーターの温度変化が感じられない それとLEDの明るさが変わらない(555やFETを熱で壊してしまったかと思い交換しましたが症状変わらずです)です。

大変勝手なコメントですがアドバイスいただければ幸いです。よろしくお願い致します。

投稿: えでぃ | 2012年1月 4日 (水) 00時49分

えでぃさん、はじめまして。
あけましておめでとうございます。

ボリュームを動かしても熱さやLEDの輝度が変わらないなら、
やはり、部品を壊したか、あるいは回路を間違っている可能性があると思います。
FETなどは、ピンの番号と機能(名称)を間違わないようにしてください。

単純な回路ですので、間違わなければ間違いなく動作しますので、頑張ってみてください。

今後ともよろしくお願いします。

投稿: ほんまか | 2012年1月 5日 (木) 10時27分

ほんまかさん、コメントありがとうございます
こんな簡単な組めない自分が情けないです(T_T)
(スイッチング電源は3台完成しました)

回路図と見比べましたが間違いはないようで。555を壊したくさいです。
何度もすみませんが教えてください<(_ _)>
・555の基本の回路を調べてみました。3番がoutputなのでこれをFETのgateにつなげれば良さげに思えるのですが、本回路ではなぜゆえに7番(放電)側をgateに繋げているのでしょうか?
.自分が使用した555はLMC555NCですがCMOSタイプでは作動に問題があるのでしょうか


※私も2012年に天体復帰を目論んでおり、機材の補充をしている最中です。電源やヒーターもそのひとつです。銀鉛時代にはなかったことばかりで「ほんまか」さんのブログで勉強させてもらってます。
こちらこそ今後ともよろしくお願いします。

投稿: えでぃ | 2012年1月 5日 (木) 19時18分

えでぃさん、こんにちは。

放電端子ですが、ここは充電、放電を繰り返しているので、ここからもパルスが出ているので、FETのゲートにつなげています。
3番ピンではなく、7番ピンにした理由ですが。。。すみません、、、忘れました。確か、何か理由があったと思ったのですが。
C-MOSはあまり関係ないように思います。

天体復帰ですか、それはいいことですね。
私も復帰組で、銀塩時代とは、かってが違うところがり、苦労したくちですが、デジタルは便利ですよ。ほんと。

投稿: ほんまか | 2012年1月 6日 (金) 22時01分

この記事を参考に、バイクのグリップヒーター用コントローラーを作りました。
わかりやすい説明のおかげで失敗せず作成できました!!ありがとうございます。

もし良ければ、私のブログに「参考記事」としてここのURLを貼りたいのですが、良いでしょうか?

投稿: かめカブ | 2012年12月 9日 (日) 04時19分

かめカブさん、はじめまして。

まさか、バイク屋さんのお役に立てるとは、嬉しい限りです。
どうぞうどうそ、自由にリンクはってください。

今後ともよろしくお願いしmす。

投稿: ほんまか | 2012年12月10日 (月) 09時58分

ほんまかさんこんにちは 参考にさせていただき早速作って見ました。冷却一眼の温度調整に使えないかなと思っています。早速なんですがいざ使おうと思って出力電圧を計るとMAXが6Vになってしまいます。一応回路図と照らし合わせてみましたが合っているようです。何が考えられるでしょうか?

投稿: のんか | 2013年2月 2日 (土) 14時36分

のんかさん、こんにちは。

6Vは低いですね。
いちおうMOS-FETで電圧は下がりますが、数mVです。
あと、ボリュームMAXにしてもダイオードの抵抗がありますので、完全な直流にはなりません。
交流対応でないテスターの場合、電圧が低く出るかも知れません。

投稿: ほんまか | 2013年2月 2日 (土) 15時53分

ほんまかさんありがとうございます。
了解です。めちゃ安物のテスターなんです。今度テスター買ってから試してみます。

投稿: のんか | 2013年2月 2日 (土) 19時24分

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