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2008年5月 2日 (金)

イメージシフトとレンズのテレセントリック性

最近、光学ネタが多くてすみません。単なるほんまかの「知識ひけらかし講座」です。軽く流してください。

さて、私のようにイメージシフトやってると一番の問題はCCDへの光の入射角の問題です。入射角が直角近くでないと、ケラレやハレーション、感度低下、干渉フィルターのムラの問題が出てきます。ですから、私はレンズを購入するときにレンズのテレセントリック性を重要視します。

テレセントリックレンズというのは、下図のように光の主光線が像面に直角にあたるレンズのことを言います。

Lps1

 テレセンレンズは、被写界深度が深いという特徴がありますが、銀塩時代にはそれほど重要視されませんでした。しかし、デジタルの時代になって、レンズのテレセントリック性が重要視されるようになりました。テレセン性が悪いと、つまり直角近くでないと、CCDの感度低下や、CCDによる光の乱反射、ローパスフィルターのムラなどの問題が起こるからです。最近のデジタル専用レンズはこのあたりを考慮しているようです。

 私のようなイメージシフト方式では、テレセン性が重要問題です。テレセン性が良いと以下のようにケラレません。

Lps2

ところが、テレセン性が悪いとケラレます。

Lps3

テレセン性の良し悪しの判断ですが、一般には公表されていませんので、後玉の大きさで判断するしかありません。後玉の大きさがイメージサークルにだいたい等しいのが良いと判断しています。

テレセン性の良いレンズは、LPS-P2フィルターや赤外カットフィルターをレンズ後方に挿入する場合に有利になります。

その前に干渉フィルターはなぜ、広角レンズで使えないのか、なぜ色ムラが出るのか説明します。干渉フィルターは、直進する光とフィルター内で反射した光を干渉させて特定の波長をカットします。

Lps4

 ところが、光が、斜めから入射すると光路長が伸びますので、効果がなくなってしまいます。干渉させるためには、波長と光路長が一定の比率にないといけないからです。たとえば入射角60度だと光路長は倍になります。そうするとこの波長に関しては効果はなくなります。しかし、逆に半分の波長の光が干渉してしまいます。つまり、フィルターの特性曲線が短波長側にシフトされるのです。

Lps5

 つまり、本来カットさせるべき波長の光をカットせず、カットさせてはいけない波長の光をカットしてしまうのです。ですから、干渉フィルターを使うと、あのように同心円状に色むらができるのです。

 また、この図を見ればわかるように、入射角が0度でない限り、波長のシフトは必ず起きますから、入射角何度以内なら必ず大丈夫ということはありません。入射角が0でないかぎり必ず影響が出ます。

 このような理由で入射角の大きくなる広角レンズでは干渉フィルターは使えないのです。ところが、干渉フィルターをレンズの後ろに持ってくれば、レンズの画角は関係なくなりますから広角レンズでも使用できる可能性が出てくるのです。ただし、最初に説明したようにテレセン性が悪いと影響が出ます。なるべくテレセン性の良いレンズを選ぶべきですが、仮にCCDに直角にあたるテレセンレンズだとしても、F値の問題が残ります。

Lps6

 F値が小さいと光束の周辺付近は光が斜めにフィルターを通過してしまいます。LPS-P2の場合推奨入射角は15度以内とありますが、カブリがひどいと15度以内でもけっこうムラが出ます。そこで厳しく10度として計算すると影響が出るぎりぎりのF値は2.8くらいになります。F4ならまず問題ないでしょう。F2.8ならカブリがひどい場合に影響が出るかも知れません。(この場合、CCD全面に等しく同じような影響が出ますので、色むらにはなりません。単に公害カットの効果が薄れるだけです。)

 このようにテレセン性は、口径や収差特性と同じように重要なレンズの性能評価です。撮像素子の小さいAPS-Cではあまり問題になりませんが、フルサイズではもっと重要になってきます。フルサイズの普及がいまいち促進しないのはこのあたりの事情もあるかもしれません。

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