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2008年7月18日 (金)

スイッチング電源の製作 その1

久々の「天文屋のための電子工作」です。今回は電源の話です。

実は、今カメラ用電源に秋月電子の可変安定化電源キットを使っているのですが、大きいのと、シリーズレギュレータなので、損失が大きいこと、レギュレータの放熱板がプラスなので漏電が心配なこと、いろいろありまして、スイッチングレギュレータに変えようと思っていたところなのです。

ほんとは、秋月電子のスイッチングレギュレータキットを買って簡単に済まそうと思ったのですが、これが大きい。コントローラ装置の中に入りそうもないので、自作することにしました。

●電源の基礎知識

降圧型の電源には2種類あります。

1 シリーズレギュレータ

 3端子レギュレータとも言います。特徴は回路が簡単なこと、発振しにくく安定しているなどがあります。

Power2

 ↑のよに3端子レギュレータとコンデンサだけで、できてしまいます。C2、C3は容量の小さいセラミックコンデンサで0.1μ~0.33μくらいですが、レギュレータの発振を抑えるのに使われます。C1、C4は入力、出力コンデンサで、電圧のサージやリップル(バラつき)をとるのに使われます。容量の大きい電解コンデンサなどが使われます。

 3端子レギュレータは、出力電圧固定型と可変型があります。固定型は電子回路でよく使われる3.3V、5V、9Vなどがあります。カメラ電源などは、中途半端な値ですから必然的に可変型を使うことになります。

 手っ取り早く済ませたいなら秋月電子のこのキットがお勧めで、私も現在使用しています。でも最初に述べたようにいろいろ問題があって、スイッチングレギュレータに変えようと思います。

 シリーズレギュレータは、損失が大きいこととそれに伴う熱対策が問題です。シリーズレギュレータは電圧降圧分がそっくりそのまま熱として放出されることが特徴です。

Power1

 今、12Vの電源を6Vに降圧するとします。消費電流は2Aとします。電力は電圧×電流ですから四角の面積が消費電力になります。これを6Vに降圧した場合、灰色の部分の電力が熱として放出されます。

 12Wというのは尋常ではない発熱量です。私が今使っている半田ごてが15Wですから。。。 これはオーバーな例としても、シリーズレギュレータの場合は放熱対策をしっかりしなければなりません。

 一般的には、電圧降下が大きい場合や消費電流が大きい場合はシリーズレギュレータは向きません。

 それから、これはスイッチングレギュレータにも言えることですが、入力電圧は、出力電圧の3Vくらい高い値でないといけません。つまり12V電源から10V電源を出すことはできません。もし、もしそうしたいなら、LDOと呼ばれる低ドロップ型の3端子レギュレータを選びます。

2 スイッチングレギュレータ

 スイッチングレギュレータは前回の「ヒーターコントローラ」で説明したPWM制御に発想が似ています。高速にON/OFFを繰り返すことにより出力電圧が一定になるように調整されます。

 損出が少ないこと(効率は70%~90%くらいです)が最大の特徴です。欠点は回路が多少複雑になることと、配線など注意しないと発振しやすくなることです。

 簡単に済ませたいなら秋月電子のキットを利用すればよいでしょう。こんなものが売っています。 しかし、今回は小型にしたかったので作ることにします。

3 LM2596

 今回スイッチングレギュレータとして利用したのは、ナショナルセミコンダクターのLM2596T-ADJです。最後の-ADJは可変型を意味します。最大出力電流は3Aで、カメラ電源としては十分です。

 メーカ推奨の回路図を以下に示します。データシートはこちら

データシートの詳しい解説にしたがって設計すると次のようになります。(出力7.5Vの場合)

Power6

 2つの抵抗の値によって、出力電圧が決まります。

Vout = 1.23(5K/1K + 1) = 7.38V

 ちょっと電圧が低くなるので、後から5Kオームの抵抗に330オームの抵抗を直列につなぎました。これで電圧は

Vout = 1.23(5.33K/1K + 1) = 7.79V

 EOSの電源としてはちょうどいいと思います。

 ダイオードは必ずしも1N5825でなくてもかまいませんが、耐圧の高いショットキーダイオードにします。

 コンデンサは容量だけではなく耐圧にも注意します。上図の値より大きければ問題ありません。

次回は製作編です。部品リストと入手先、製作上の注意点を書きます。

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コメント

これはまさに私の求めているもの!
まるで私のための記事のようで感動してしまいました。
3端子レギュレータとスイッチングレギュレータの違いって何?と思っていたのですが良く分かりました。
次の製作編ではぜひ素人にも製作できるように実際の配線の写真も入れていただけるとありがたいです。
詳細な記事をありがとうございました。

投稿: T-Fix | 2008年7月19日 (土) 10時29分

t_fixさんこんにちには。
あはぁ、はぁ。電気苦手な人いっぱいいますからね、やりがいありますよ。

今、旅行中なので連休明けに製作記事アップしますね。それでは。

投稿: ほんまか | 2008年7月19日 (土) 12時20分

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