「デジタル星野写真入門7」カメラ、レンズの設定
え~、皆様、こんちは。最近この連載息切れです。。。
天体写真を撮るには当然ですが、カメラ、レンズの設定を考えなくてはなりません。事前に十分考えておきましょう。考えておくのは
- ISO感度の設定
- 露出時間
- コンポジット枚数(連続撮影枚数)
- レンズの絞り値
以上4点です。
1 ISO感度の設定
ISO感度が高いほど暗いものが良く写り露出時間を短くできますが、その代わりノイズが多くなります。私はどちらかというとISO感度を高くして露出時間を短くする派です。ですからノイズの少ない冬場ならそのカメラの常用設定での最高ISO感度を使用します。私のカメラではISO1600です。ノイズの多い夏場はその下のISO800を使います。
2 露出時間
これもISO感度と同じで、露出時間が長いほど良く写りますが、ノイズが増えます。また露出時間が長いと失敗する可能性は高まります。失敗する可能性とは、たとえば赤道儀の追尾ずれ、飛行機の通過、雲の発生などです。また、光害カブリなどで画像が真っ白になるほど露出をかけてはいけません。
星野写真の場合は、それほど露出時間は長くかけません。せいぜい数分でいいと思います。私はだいたいISO1600、レンズの絞りF4で露出5分前後くらいを目安にしています。
3 コンポジット枚数
コンポジットとは、天体写真でよく使われる手法です。たとえば、露出12分で1枚を撮るところを6分露出で2枚連続で撮るのです。あるいは3分露出で4枚連続して撮ります。そして、画像処理の段階ですべて重ねるのです。なぜ、このような事をするかと言えば、まずデジカメの場合、露出時間が長いとノイズが増えます。また撮影ミスの可能性も高まります。
ですから、露出時間を短く区切って、枚数をたくさん撮るのです。この画像を重ねる処理のことをコンポジットと言います。コンポジットには2種類あります。
●加算コンポジット
単純に画像を加算で重ねます。これは露光量を増やす効果があります。
●加算平均コンポジット
たとえば2枚コンポジットなら、2枚の画像を加算して2で割ります。露光量は一枚のときと同じです。しかし、ランダムな場所に発生するノイズは2枚の画像でまちまちですから、加算平均によって半分になります。ノイズが減れば、画像処理でより強調処理がしやすくなります。
下の画像を見てください。左側は一枚撮りのバラ星雲です。右側は同じ露出時間のものを8枚加算平均コンポジットしたものです。どちらも違いがないように見えます。
しかし、バラを出そうとコントラストを上げると違いがはっきり分かります。
右側の8枚コンポジットの方がはるかに滑らかです。
こうしてみるとコンポジットはいいことずくめですが、では、ノイズを無視した場合、露出5分2枚コンポジットと露出10分一枚撮りを比べた場合、どちらの画像が良いでしょうか。
答えは一枚撮りです。露出5分で写らない淡い部分は何枚重ねても写りません。0は何倍しても0ですから。
最近はデジカメのノイズが少なくなり、冷却デジカメなるものも出てきていますから、コンポジットの重要性は低下してきています。しかし、まったくノイズレスになったわけではなく、また露出時間が短い方が確実に撮影の成功率は上がりますから、ぜひコンポジットしてみてください。私は最低でも2枚コンポジット、多いときは8枚コンポジットします。露出5分なら8枚コンポジットしてもトータル40分です。星雲や星団などの写真に比べれば撮影時間は少ないほうです。
それから、コンポジットですが、通常は何枚でもかまいませんが、私の場合、コンポジットの重ね合わせ作業をより精密に行うため2枚ずつ組にして重ねていきます。(トーナメント方式という)トータルのコンポジット枚数は2の累乗にする必要があります。(2枚、4枚、8枚、16枚、、、)
[図 トーナメント方式のコンポジット]
4 レンズの絞り値
レンズの絞りをどれくらにするかも、悩みどころです。一般には絞ったほど有利です。
- 周辺減光が減る
- 周辺の収差が減る
- 色収差が減る
- 星がシャープに写る
ただ、絞ると暗くなりますから、露出時間を長くする必要があります。結論から言うと、広角レンズは周辺減光や周辺収差が大きいですから、2段くらい絞った方が良いでしょう。
望遠レンズもEDレンズなどを使った高価なレンズ以外は2段くらい絞った方が良いでしょう。望遠レンズの場合は特に色収差が問題になるからです。
開放F値がF2.8ならF5.6になります。
最後に
よくネット上で見かける初心者の星野写真を見ると、レンズの絞りが絞込み不足で、コンポジット枚数も足りないように見受けられます。よく絞り込んで、コンポジット枚数が多ければ、後の画像処理が非常に楽になります。まだ画像処理が未熟な初心者こそ、絞り込んで、コンポジット枚数を増やすべきだと思います。
なかなか良い作品が出来ない方は「絞りは2段絞り、8枚コンポジット」でやってみたらどうでしょう。見違えるように良くなりますよ。
次回はピント合わせについてです。
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コメント
はじめまして。
いつも拝見させていただいております。
一年かけて世界一周旅行を計画しています。
そこで、望遠鏡を持ち歩きたいなと考えているのですが、
どんなものを選んでいいかわからないのでアドバイスいただけないでしょうか。。
赤道儀はできるだけ消費電力の小さいものがいいのですが。。
鏡筒本体が~5kgぐらいがいいのですが。。
投稿: キャットルフィッシュ | 2008年11月29日 (土) 19時19分
キャットルフィッシュさん。はじめまして、いつもご覧頂きありがとうございます。
遠征中のためお返事遅れて申し訳ありません。
望遠鏡を持ち運びたいとのことですが、
眼視観望目的でしょうか、それとも写真撮影目的でしょうか。撮影目的ならけっこう大掛かりになりますね。カメラレンズを使った星野写真なら割とコンパクトにすみますが、望遠鏡を使った撮影なら常に持ち運ぶのは辛そうと思います。
眼視目的なら赤道儀は必要なく割りとコンパクトなセットを組めます。
赤道儀の消費電流ですが、単純に赤道儀が大きいほど大きいです。
望遠鏡の使用目的がはっきりすれば、もう少し具体的にアドバイスできます。
それでは。
投稿: ほんまか | 2008年11月30日 (日) 17時22分
ご返信の程ありがとうございました。
撮影もできたらいいならいいなと思います。
旅立つまでけっこう時間もあるので、
日本で練習してから行くつもりです。
反射鏡はできたら避けたいところです。
星雲をISO1600で2~3枚ぐらいのコンポジットでまとめていきたいなあと考えています。
目立つような収差でなければ画質もそてほど気にしません。
赤道儀は、最悪乾電池でもいけそうなのがいいです。
2時間ぐらい動けば十分です。
投稿: キャットルフィッシュ | 2008年12月 1日 (月) 11時28分
キャットルフィッシュさん。こんにちは。
持ち運び可能なお気軽星雲撮影システムですね。そしてたら、
鏡筒はミニボーグ60EDまたは45EDプラスレジューサでしょうか。またはタカハシのFS-60CB+レジューサ、またはカメラレンズでしょうか。
これらが載る赤道儀は、ポータブル赤道儀で十分と思います。ただ、自由雲台を使うやつだと、構図会わせが難儀ですから、ドイツ式がいいですね。
タカハシのスカイパトロール+ドイツ式ユニットなんかいいんじゃないでしょうか。
私だったら以下のシステムを組みますね。
●鏡筒 ミニボーグ60ED + 0.85倍レジューサ
●スカイパトロール+ドイツ式ユニット
これで、ISO1600 露出2~3分×8枚コンポジットで星雲星団とりまくりますね。
それでは。
投稿: ほんまか | 2008年12月 1日 (月) 19時55分
このトーナメント方式のコンポジットですが、32枚コンポジットするとなると思うと気が遠くなってきました(笑)
投稿: genta | 2008年12月 1日 (月) 20時35分
gentaさん、こんばんは。
32枚だと31回コンポ作業するようですね。
こないだの勾玉は16枚コンポでしたが疲れました。
でも、2枚づつたと、差の絶対値で真っ黒になるのでより精密にあわせられます。
投稿: ほんまか | 2008年12月 1日 (月) 21時22分