« 「デジタル星野写真入門15」夏の天の川の処理 | トップページ | 「デジタル星野写真入門17」はくちょう座付近の処理 »

2008年12月19日 (金)

「デジタル星野写真入門16」夏の天の川の処理2

前回の続きです。カブリ補正からです。

手順3 カブリ補正

カブリ補正の主役は調整レイヤーです。レイヤーは今まで何度か出てきましたね。レイヤーとは背景の上に重ねる画像です。コンポジットや、比較明コントラストアップで使いましたね。

調整レイヤーは、上に重ねるのが画像ではなく、「明るさ・コントラスト」や「レベル補正」などのアクションです。面白いですね。元画像そのものにアクションを加えるのではなく、レイヤーという形で積み重ねるのです。調整レイヤーを使えば、過去のアクションをキャンセルしたり、再調整したり、アクションの順番を入れ替えたりできます。素晴らしいです。これができるからフォトショップはいいのです。

それだけではありません。後で説明しましが、調整レイヤーはマスクを使えるのです。

それでは、やって見ましょう。まず、(レイヤー)→(新規調整レイヤー)→(レベル補正)を選択してください。((レベル補正)のダイアログが出ますが、いったん閉じてください。)下図のように背景画像の上に、(レベル補正)の調整レイヤーができます。ここで行った(レベル補正)は、これより下のレイヤーまたは背景画像に影響を与えます。

Sample16

そして、矢印の白い部分を見てください。ここをマスク画面と言います。最初は全面白ですね。マスクとは、白い部分だけに影響させることで、黒い部分に影響を与えないことを意味します。中間の灰色の場合は、中間の影響を与えます。最初は白一色ですから、画像全体に影響を与えます。

つまり、マスク画面にカブリに添って白黒のグラデーションを与えてやればカブリ補正ができるのです。。

それではグラデーションを作って見ましょう。まず、マスク画面をクリックして、選択状態にします。

左端のツールパレットのグラデーション①をクリックし、画面上の線形グラデーション②をクリックしてください。

そして、カブリは下方向に向かって大きくなりますから、画面上でマウスを矢印③のようにドラッグしてください。

Sample17

上図赤丸のようにグラデーションができました。(白黒のグラデーションではない場合は、(編集)ボタンで白黒のグラデーションを選択してからやり直してください)

下側が白くなるようにしてください。もし逆だったら、マウスをドラッグする方向を逆にしてください。

ドラッグする長さを短くするとグラデーションの勾配が急になります。長くすると緩やかになります。何度でもやり直しが効きますので、カブリの勾配にあうように何度も繰り返してみてください。

グラデーションがばっちり決まったら、実際にカブリ補正します。矢印のところをダブルクリックしてください。

Sample18

おなじみの(レベル補正)のダイアログが出てきましたね。カブリ部分を暗くするため中間の三角を右側に寄せてください。一度にカブリ補正はできません。最初はほどほどにしてください。

次に色を補正するためにチャンネルをグリーンにして、同様に中間の三角を右に寄せてください。

Sample19

同様に赤が強くなりますので、今度は、チャンネルをレッドにして、赤を弱くしてください。

できましたか。カブリ補正は一枚の調整レイヤーでは補正しきれません。同じことを何度も繰り返して、調整レイヤーを増やしていきます。

ちょっとずつ少しずつ補正していくのがコツです。

次は円形グラデーションを試して見ましょう。画面上の、線形グラデーション②のとなりに円形グラデーションがあります。ここをクリックしてマウスでドラッグすると円形のグラデーーションができます。しかし、円が黒くなるとまずいです。円が白くなるようにした方がやりやすいので、(編集)ボタンをクリックします。

Sample110

そして、赤丸の矢印アイコンを左右で入れ替えてください。そして再度マウスでドラッグします。

そうすると今度は白い円のグラデーションができます。

これで円形のカブリを補正できます。

ある程度やったら、補正効果を確認するために彩度を上げて見ましょう。彩度を上げるにも調整レイヤーを使います。まず、一番上のレイヤーをクリックして選択状態にした後に(レイヤー)→(新規調整レイヤー)→(色相・彩度)を選択します。そして、色相・彩度のダイアログが出ますので、彩度を上げてみてください。

Sample111

色相彩度の調整レイヤーが一番上にあることが大事です。なぜならレイヤーは常にその下にあるレイヤー全部に作用するからです。

レイヤーを新規に作る場合は、現在選択状態にあるレイヤーのすぐ上に作られることに注意してください。レイヤーの順番がおかしいときは、マウスのドラッグで順番を入れ替えることができます。

さて、彩度を上げてみると、まだまだ不十分ですね。

さらに新規調整レイヤーを作り補正を続けてください。私の場合、8個目の調整レイヤーでやっとカブリがとれました。

なお、色彩・彩度の調整レイヤーをOFFするには、目のアイコン部分をクリックすればOFFすることができます。色彩彩度のレイヤーは削除しないで、ここでON/OFFをするようにしてください。

Sample112

とりあえず、この状態でファイルを保存し、レイヤーをいったん結合しましょう。(レイヤー)→(画像を統合)してください。

カブリ補正が終了した段階の画像です。

Sample113

手順4 青ハロ、ノイズとり

 カブリ補正をしたら、バックがしまったのか、恒星の青ハロが目立つようになりました。これを目立たなくします。青ハロはレンズの色収差からくるもので恒星の周りに青い輪ができます。天体写真では嫌われものです。なお、青ハロ低減については別の回に説明します。ここでは簡単にとる方法を紹介します。

 (フィルター)→(ノイズ)→(ノイズを低減)を選択します。「カラーノイズを低減」を30%~70%くらいでずらして青ハロが目立たない最小の値にしてみてください。あまり高くすると恒星の色がなくなります。

Sample114

手順6 天の川の色補正

 さぁ、いよいよ最後の仕上げです。天の川の色を補正しましょう。デジカメで天の川を撮ると少し赤っぽくなるようです。

 天の川の色はどのようにすれば良いか悩むところです。好みの問題もありますし。ほんまかが思う綺麗な天の川の色は、

天の川の周辺から背景にかけてはやや青白、天の川の端は黄緑色。中心部分はアンバーで赤が強いかんじ。光のスペクトルに似ていますので、これを「ほんまかの天の川スペクトル理論」といいます。また、天の川を直線上に切ってその上の色をすべて混ぜると私はニュートラルになるんではないかと思っていますので「ほんまかの天の川ニュートラル理論」ともいいます。これは綺麗な銀塩写真を研究した結果で、まんざら間違っていないように思いますがどうでしょう。まぁ人それぞれの天の川の色があっていいと思います。

 天の川の色を調整するには、調整レイヤーを使いますが、その前に天の川だけを選択して背景を排除するマスクを作る必要があります。

 まず、背景画像をコピーしてください。そして、コピーしたレイヤーに対して、(画質調整)→(ライティング)→(レベル補正)をします。

 下図のように三角スライダーをぐっと引き寄せて、天の川以外が真っ暗になるようにします。この操作をレベルの切り詰めとよびます。天の川の端の淡い部分まで暗くならないようにしてください。

 Sample116

これでマスクができました。このマスクをコピーします。(選択範囲)→(すべて選択)をし、(編集)→(コピー)でコピーできます。

次に(レベル補正)の新規調整レイヤーを作ってください。そして下図の矢印のマスク画面を[Alt]キーを押しながらクリックしてください。

Sample117

真っ白なマスク画面が現われますので、Photo214

先ほどコピーしたマスク画像を(編集)→(ペースト)します。

Photo215 

そして、背景のコピーレイヤーはマスクを作るためだけのものですからもう、用なしです。目のアイコンをクリックして非表示にしておきます。

Sample118

これで天の川だけ(レベル補正)できる状態になりました。下図の赤丸の部分をダブルクリックしてください。レベル補正のダイアログが開きます。まず、全体的にもうちょっとコントラストを上げられそうなので、下図のように3つのスライダーを動かしてコントラストを上げます。あまりやり過ぎないように注意してください。下図の例ではヒストグラムの山が2つに割れてあまりいい状態ではないです。

Sample119

コントラストをちょっと上げたら、次に色の補正です。チャンネルを各色に合わせて好みの色にしてください。ほんまか理論に従うなら、天の川の周辺がやや黄緑になるぐらいに調整すると良いです。

手順7 天の川の彩度アップ

 ちょっと彩度がたりないので、天の川の彩度を上げてみましょう。まず、先ほどの(レベル補正)の調整レイヤーをコピーします。(レイヤー)→(レイヤーを複製)でコピーできます。

 次に、(レイヤー)→(レイヤー内容の変更)→(色相・彩度)を選択します。

Sample120

ここで彩度のダイアログが出ますので、彩度をちょっと上げてください。

手順8 最後のレベル調整

 これで最後の処理です。背景が明るいですね。背景を暗くしましょう。ここで「明るさ、コントラスト」コマンドで暗くしてはいけません。これをすると画像全体が暗くなります。せっかく天の川の輝度がちょうどよくなるように調整したのに台無しになってしまいます。(レベル補正)を使います。これを使えば階調が引き伸ばされるので、明るい部分は明るいままです。(ただし、コントラストが上がります。)

 (レベル補正)の新規調整レイヤーを作成し、レベルの左のスライダーを上げ、背景を暗くします。

Sample121

ヒストグラムの山の左斜面が揃っていない場合はそろえましょう。

これで完成です。

Sample123

完成!

あぁ~長かった。

次回は、白鳥座付近の処理です。星マスクが登場します。

|

« 「デジタル星野写真入門15」夏の天の川の処理 | トップページ | 「デジタル星野写真入門17」はくちょう座付近の処理 »

コメント

はじめまして。天体写真初心者です。
色カブリ補正で検索していたら此方にたどり着きました。
色補正の記述で意味が解らないので教えてください。
何故グリーン→レッドの順で補正するのでしょうか
またスライダーの調整量は、何を見ながら決めるのでしょうか
お手数おかけしますがご教授願います。

投稿: 超初心者 | 2015年8月25日 (火) 19時49分

超初心者さん、はじめまして。

グリーン、レッドの順番は特に定めはありません。
ただ、光害カブリは、圧倒的にグリーン成分が大きいので、グリーンを最初にしただけです。グリーンを補正しないと、赤が強いのもわからないと思います。

スライダーの調整量は、ヒストグラム見ながらやります。3色の山がだいたい重なるように調整します。

ヒストグラムの見方についてはカテゴリーの
「ワンランクアップのデジタル星野写真」に詳しく記述しています。

投稿: ほんまか | 2015年8月25日 (火) 23時05分

ほんまかさん
丁寧な回答、ありがとうございました。
これから、ほんまかさんの処理講座をバイブルとして
技術習得に励みたいと思います。
引き続き、お相手頂ければ助かります。
(気が向いた時で結構なので)

投稿: 超初心者 | 2015年8月27日 (木) 22時21分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「デジタル星野写真入門15」夏の天の川の処理 | トップページ | 「デジタル星野写真入門17」はくちょう座付近の処理 »