真蒼さんのご質問にお答えして、その2
またまた真蒼さんから、答えが長くなりそうなご質問が来たので、新規記事としてお答えします。
>広角で使える光害除去フィルターってないんですかね。いいのが見つからないのですが・・・。
LPS-P2のような干渉フィルターは、光がガラスの中を通過するときの光路長によって遮断する波長が決まるので、光が斜めからあたると光路長が変わってしまって、波長特性曲線が短波長側にずれてしまいます。そのため、同心円上にカットされる周波数が異なり色ムラとなってあらわれます。
だから、何ミリ以上のレンズだから大丈夫とか、何ミリ以下の広角レンズはだめという閾値はありません。光害がひどいと、望遠レンズでも影響が出ます。ただ、だいたいおっしゃるように80mmくらいの中望遠以上なら使えると言っていいと思います。
さて、ご質問の広角レンズで使える光害カットフィルターはあるかということですが、たぶん満足のいくものはないと思います。LPS-P2はカットする帯域(バンド)が狭いので入射角の影響を受けやすいですが、昔の光害カットフィルターはバンドが広いので、入射角の影響は少ないです。ただ、カラーバランスがマゼンタよりになる傾向があります。
現実的な解決策としては、FFフィルターと言って、カメラマウント部に光害カットフィルターを挿入する方法です。つまりレンズ後方です。この場合、レンズの焦点距離は関係なく。レンズのテレセントリック性と言って、光の直行度に依存します。テレセントリック性は公表されていませんが、最近のデジタルレンズはみないいようです。
しかし、この場合でも完全に直角でないかぎり多少ムラは出ると思います。
2番目の方法としては、今まさに私がやろうとしているR64フィルターを使うことです。640nm以下の光を完全にシャットアウトしますので、光害の影響はうけません。干渉フィルターでないので、色ムラも出ません。ただ、R64フィルターだけでは、真っ赤な画像になってしまいますので、ノーフィルターの画像も撮って加算してやる必要があります。
私はこのR64フィルターがデジタル星野写真の本命と思っています。去年は失敗しましたが、今年はなんとか満足のいく写真を撮りたいです。
最後は、そして最良の方法は、暗い場所に行くことです。これにまさる光害対策はないです。
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コメント
ほんまかさん当ブログを紹介いただきありがとうございます。
グラデーションレイヤーは単なる受け売りでして(^^;TK_Starlightさんに教えていただきました。
今月号の天ガにも1ページ掲載されていますが、TKさんの作品はとにかく緻密で憧れます。
私が天体写真を始めた頃の4巨匠(TKさん、Ryutaoさん、カムイミンダラさん、よっちゃん)はみなさん銀塩のみで撮影されていました。これは単なる偶然ではないでしょう。
デジタル全盛の現在でも、作品の善し悪しを決定するのは空の状態と元画像のコントラストと思っています。
特に星野写真では後の小細工が効きませんから、よい元画像を得ることが一番の近道ですよね。
投稿: コーチ | 2009年11月11日 (水) 00時12分
コーチさん、ありがとうございます。
私にとっての巨匠はやはり、コーチさん、よっちゃんさんです。
>みなさん銀塩のみで撮影されていました。これは単なる偶然ではないでしょう。
同感です。みなさん基本的な撮影技術がしっかりされています。
>デジタル全盛の現在でも、作品の善し悪しを決定するのは空の状態と元画像のコントラストと思っています。特に星野写真では後の小細工が効きませんから、よい元画像を得ることが一番の近道ですよね。
同感ですが、コーチさんに言われると、身にしみます。私にとっての先生ですから。
最近、天体写真というものが、冷却CCDなどの機材の話題や、画像処理技術に偏っているような感じでとても危惧しています。
画像処理に関しても賛成派、否定派どちらも、画像処理技術を過大評価していると思います。ほんとに大切なのは良質な元データを得る技術と情熱なのですが、、、、
投稿: ほんまか | 2009年11月11日 (水) 10時25分
なんか何度も時間をとらせてしまって、本当に申し訳ない気分になってきます。ありがとうございます。
やはり簡易にはFFフィルターですか。いつかは買いたいです。というのも最近銀塩からデジイチに乗り換えたところで、激しく金欠状態なのです。フィルターを買うなんてもってのほかの状態なのに、調べていたら、どうやら自分の今持っているレンズがFFフィルター装着時は使えないことが判明し・・・レンズを買うお金なんてありません・・・。
>最良の方法は、暗い場所に行くことです。これにまさる光害対策はないです。
そうなんですよね。ほんとにそうなんですが、今のとこ自車を持っていないのでマンションの前の駐車場から動くことができません・・・このマンションの光が深夜も完全には消えてくれなくて、かなりうっとおしいんですよね・・・。
R64フィルターは使い方がいまいちよくわかってないのでもうちょっと調べてみます。これなら今の自分が買っても罪悪感を感じる値段ではないですが・・・。
>最近、天体写真というものが、冷却CCDなどの機材の話題や、画像処理技術に偏っているような感じでとても危惧しています。
画像処理に関しても賛成派、否定派どちらも、画像処理技術を過大評価していると思います。ほんとに大切なのは良質な元データを得る技術と情熱なのですが、、、、
ぐさっときますね・・・。自分は過大評価するような技術も持ち合わせていませんが、良質な元データを得る技術も全然です。修業します・・・。いつまで、天体写真を撮る時間的余裕を保ち続けられるかはわかりませんが・・・。いろいろと教えていただいて本当にありがとうございました。これからもブログ楽しみにしております。
投稿: 真蒼 | 2009年11月11日 (水) 17時18分
真蒼さん、まぁ、修行なんてお固いこと言わず、気楽に気楽に。趣味ですから。
それにしても、マンションの駐車場とは、天文屋としては過酷な環境ですね。でもベランダで素晴らしい天体写真撮ってる人もいますから、工夫次第では楽しめるのではないでしょうか?
いっそのことカラーはあきらめて、R64モノクロ写真の作品に専念するのもいいかもしれませんよ。
それでは。
投稿: ほんまか | 2009年11月11日 (水) 21時54分