R64フィルターを使用したデジタル星野写真その1
お待たせしました。今日から、最近私がはまっているR64フィルターを使用したL-RGB合成によるデジタル星野写真の作り方を説明したいと思っています。
といっても、R64フィルターを使った天体写真は太古の昔からあり、またL-RGB合成方法も冷却CCDユーザはいつも当たり前のようにやっていることのなので、目新しいことは何もありません。
これから説明することは、次の一行で、分かる人はわかります。
「R64フィルターで撮影した画像をノーフィルター画像と加算し、これをL画像とし、L-RGB合成する」
ただこれだけです。でも初心者に優しいブログを目指すこのブログの趣旨から言ってやらないわけにはいきません。。。というか。。。中途半端さんに後押しされて。。。
R64フィルターを使うわけ。
赤い星雲の強調と、対光害対策です。そして、一番の恩恵は画像処理が楽になるということです。広角系の星野写真は写野が広いので、光害の影響を受けやすいです。だから、いつも画像処理はカブリの除去に悩まされます。私自身も今までカブリ除去には多くの時間を費やしてきました。しかし、R64フィルターを使うことによって、カブリ除去がほとんどいらなくなりました。
それでは、いかに画像処理が楽になるか、その証拠写真をご覧頂きましょう。
まずは、ノーフィルターの元画像。これを1画像とします。
次は、R64フィルターによる画像を加算した画像です。これを2画像とします。
ここで重要なのは、赤い星雲の写りは、1画像も2画像も理論上同じです。(加算平均しているので)にも関わらず、2画像のバックが暗くしまっています。
1画像を画像処理するのと2画像を画像処理するのはどちらが楽ですか。決まっていますね、2画像が圧倒的楽です。
そう、R64フィルターを使う利点は赤い星雲の移りが良くなるのではなく、赤い星雲以外の写りが悪くなるのです。つまりカブリの影響を軽減できるのです。
そもそも光害対策とは
従来より光害対策として、光害カットフィルターやLPS-V3フィルターなどが使われてきました。R64フィルターもそのうちの一つです。
しかし、光害カットフィルターや、LPS-V3フィルターは干渉フィルターであり、広角レンズには使用できません。また使用できたとしても、色ムラが発生したり、緑成分が少なくなり、カラーバランスが崩れるという欠点がありました。
広角レンズで使えるフィルターはR64フィルターだけです。ですから、いやおうなくR64フィルターを使うしかないのです。ところがR64フィルターは赤い光しか通しませんから、写すとこうなってしまいます。
これじゃカラー写真とはいえません。そこでノーフィルターで撮った画像と加算するのですが、普通に加算したのでは、やはり赤が非常に強い画像になってしまいます。
そこで去年まで私は次のような方法で加算していました。
1 ヒストグラムの山の左半分をカットして加算。
2 または、比較明で加算。
3 加算するとき、明るさの最小値フィルターで微光星を消してから加算。
ただ、いずれの方法でも不自然さは残り、それを画像処理でカバーしていました。ところが今年は、ノーフィルター画像とL成分だけ加算してL-RGB合成するようにしてから、うまく、しかも簡単に合成できるようになりました。
L-RGB合成とは
L-RGB合成は、もともとモノクロ冷却CCDで、カラー合成するための手法です。ノーフィルターで撮影した画像をL画像といいます。そして、Red Green Blueフィルターで撮影した画像をそれぞれR画像、G画像、B画像といいます。
通常はR,G,Bの三種類の画像でカラー合成はできます。ところがそれとは別に色の情報を持たないL画像を別に撮って合成する手法をL-RGB合成と言います。私も詳しいことは良く分かりませんが、L画像を別に撮った方が効率が良いみたいです。
また、L画像はノーフィルターと言いましたが、Hαフィルターで置き換えたり、ノーフィルター画像に加算することは普通に行われています。今回HαではなくR64フィルターを使っただけのことです。
さて、デジカメでぱちりと撮るとすでにカラー画像です。ですから、RGB画像は既に得られいます。L画像ですが、これは色の情報をもたないのでRGB画像をモノクロモードにすればL画像になります。
ここでL-RGB合成をすれば、元の画像が得られます。当たり前ですね。このとき、L画像にR64フィルターで撮影した画像を加算してやるのです。(実際は加算平均)
ここで重要なのはL画像は色の情報を持たない輝度だけの画像です。色の情報はすべてRGB画像になります。ですから、L画像にR64フィルターによる画像を加算しても色が赤くなることはないのです。
今日はここまで、
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コメント
まことに素早い対応で記事にしていただき感激です。
ありがとうございます。
初心者にはほんとうに優しく理解の出来るご説明で、よく理解できました。
いよいよ私もこっそり手に入れてあったR64フイルターを使うときが来ましたね。
師匠がおっしゃるように今年は中途半端の名を返上するためにモーダッシュで頑張ります。イザ出陣!!
投稿: 中途半端 | 2010年1月 5日 (火) 23時46分
ほんまかさん
あけまして御目出度うございます。早速のテクニック公開、楽しみにしておりました。
なるほど、ノーフィルター画像とR64画像をコンポしてモノクロにしてから、Lとして使っているのですね。R64画像のLをそのまま元画像のLに貼付けているのかと思ってました。
私も秘蔵しているSC64フィルターを今度使ってみます。
ほんまかさんは絞りを変えて露出時間を合わせているようですが、R64画像とノーフィルター画像で周辺光量落ちの違いなどは出ませんでしょうか。
投稿: takos | 2010年1月 6日 (水) 21時03分
中途半端さん、中途半端さんに押されてやっと始めることができました。R64フィルターこそっり入手してたのですね。ぜひ挑戦してみてください。
投稿: ほんまか | 2010年1月 6日 (水) 22時03分
takosさん、あけましておめでとうございます。
>R64画像のLをそのまま元画像のLに貼付けているのかと思ってました。
この方法もやってみましたが、すごい不自然な画像になりました。R64成分しかないところに色をつけても不自然ですね。
>ほんまかさんは絞りを変えて露出時間を合わせているようですが、R64画像とノーフィルター画像で周辺光量落ちの違いなどは出ませんでしょうか。
するどい! その通りです。よく気がつきましたね。これについては次の記事で詳しく説明します。
投稿: ほんまか | 2010年1月 6日 (水) 22時07分
ほんまか様
初めまして、ATSUJIRODESUと申します。
天体撮影を始めて2年という初心者です。最近、Hαフィルターで撮影してみたい。という希望があるので、Webで色々と調べていた所、ほんまか様のR64フィルターの記事にたどりつきました。
一通り読ませていただきました。その中でご質問させて頂きたい事があり、コメントさせて頂きました。
R64フィルター使用時のヒストグラムの山と、未使用時のヒストグラムの山が同じになるように撮影しないといけない。
というのが前提条件。という解釈で間違っていませんでしょうか?
カメラレンズでの撮影ですと、絞りを調節してヒストグラムの山を合わせる事が出来ると思いますが(同じ露出時間でOK)、
望遠鏡の場合ですと、やはり露出時間を調整してヒストグラムの山を合わせるしか方法はありませんよね?
望遠鏡ですと露出時間で調整しますので、ノーフィルター画像より、R64フィルター画像の方がノイズの量は多くなると
思いますので、例えばノーフィルター画像は4枚撮影する所を、R64フィルター画像は8枚撮影し、コンポジットして
ノイズの量を減らしてあげる。という方法になるのでしょうかね?
分かりやすく図でご説明されている部分で、細かい所なのですが、こんな手順で間違っていませんでしょうか?
1.ノーフィルターで4枚撮影
2.R64フィルターで8枚撮影
3.1番のダークフレームを撮影
4.2番のダークフレームを撮影
5.1番の写真を3番のダークフレームを使い、ダーク減算処理。必要であればフラット処理
6.2番の写真を4番のダークフレームを使い、ダーク減算処理。必要であればフラット処理
7.5番の写真をコンポジット(ノーフィルター撮影)
8.6番の写真をコンポジット(R64フィルター撮影)
9.7番の写真を、そのままの状態のファイル(RGBファイル)と、モノクロ化したファイルに分ける。
10.8番の写真をモノクロ化する。
11.9番のモノクロ化したファイルと10番のモノクロ化したファイルを加算平均コンポジット(L画像)
12.9番のRGBファイルと、11番のL画像をLRGB合成
また、
上記11番のノーフィルター画像と、R64フィルター画像のコンポジットは、PSEで微調整しながら処理されておりますが、
SI6では出来ないものなのでしょうか?
以上になります。よろしくお願いします。
ちなみに、下記URLは、私のブログです。よろしければ一度、ご覧になっていただければ幸いです。
http://blogs.yahoo.co.jp/atsujirodesu
投稿: ATSUJIRODESU | 2012年1月29日 (日) 16時17分
ATSUJIRODESUさん、はじめまして。
ブログ拝見しました。天体写真、どれも素晴らしいですね。とても2年目とは思えません。私が2年目のころは、それはひどい写真ばかりでした。
2年目からこんなすごい写真撮ってるようですから、今後の活躍が楽しみです。
投稿: ほんまか | 2012年1月29日 (日) 16時47分
さて、ご質問の件ですが、
ヒストグラムの山を合わせる必要は、ないですよ。
ただ、天体写真はヒストグラムの山がだいたい中央というのが基本ですから、どちらも中央というのが理想です。
露出時間は同じにしていいと思います。その方が、ダークフレームが共通して使えますから。
それにより、R64の方が、ヒストグラムが暗くなりますが、別にそれで弊害はないです。
投稿: ほんまか | 2012年1月29日 (日) 16時51分
手順もこれでいいです。
露出時間が同じなら、ダーク共通で使えますね。
コンポジットですが、位置あわせは、フォトショよりSIの方が優れてしますから、SIもってるならSIでいいですよ。
フォトショにこだわる必要はありません。
またSIならLRGB合成も出来ますしね。
コンポジットの加算平均でもいいですし、加算後、デジタル現像でもいいです。
いろいろやってみてください。
色収差の大きいレンズなら、フィルターをつけた場合と、ノーフィルターの場合で、ピントを合わせなおした方がいいですね。
ただ、この場合、拡大率が違うので、ノーフィルター画像と、フィルター画像で、合成がうまく行かない場合があります。拡大率を調整しても合わない場合は、
フォトショップCS3以上の、フォトマージで自動で合わせると楽です。
それでは、頑張ってください。
投稿: ほんまか | 2012年1月29日 (日) 16時57分
ほんまか様。
さっそく、教えてくれてありがとうございます。
フィルターって、安いものではありませんので、撮影~画像処理までの一連の事をきちんと整理・把握しませんと購入してもムダに終わってしまう可能性もございましたので、失礼かとも思いましたが、色々と質問させて頂きました。
私、こういったフィルターの存在を知ったのは最近なんです。ですがR64フィルターは、なかなか入手こんな品物だという事で、その代わり?になるのがHαフィルターである事を知りました。
私が今使用している機材は、ニコンD40のIR改造した物を使っております。撮影する為の道具は、ED-103S・ミニボーグ60ED・カメラレンズの3種類がありますので、これらでも使用出来るHαフィルターがないものかと探していましたら、光映舎から「ニコン用のHαフィルターFF」という物を発見したんです。カメラボディーの中に埋め込めるタイプですので、色々な鏡筒が使えます。(http://www.koheisha.jp/Ha.html)(http://www.koheisha.jp/seihinhanbai/filterzaiko.html)
半値幅が15nmですので、初心者の私には丁度良いサイズなのかなぁと思うのですが、ほんまか様から見たらどう思いますでしょうか?
本当に、色々とご質問してしまい、申し訳ございません。
投稿: ATSUJIRODESU | 2012年1月29日 (日) 17時44分
ATSUJIRODESUさん、
全然失礼じゃないですよ。
FFタイプのフィルターですが、レンズ前面に取り付けるフィルターに比べて、
1 干渉ムラが出にくい。
2 安い
3 すべての光学系で共通して使える
などの利点があります。
欠点としては、
1 取り外し、取り付けが面倒
2 装着、不装着でピント位置がずれる
3 ハレーションが出やすい
などがあります。
Hαフィルターですが、レンズ前面に取り付ける通常のフィルター枠は、サイズが限られていて、入手も困難ですから、
Hαフィルターなら事実上選択肢としてはFFしかないでしょう。
ですから、これでよいと思います。
半値幅ですが、狭いほど、コントラストは高くなりますが、ムラは出やすくなります。いろんな光学系で使うことを考慮するなら、幅が広いほどいいでしょう。
投稿: ほんまか | 2012年1月30日 (月) 08時21分
ほんまかさま、こんばんは。
ご返事が遅くなってしまいました。
私も、自分なりに色々と調べた結果、半値幅は15nmぐらいが妥当かな。と思い光映舎さんのHPに載っているHαフィルターFFを購入しようと考えましたが、在庫がなく、もう生産しません。と言われてしまいました。しかたがなく、他の天文屋さんに問い合わせてみましたが同じく「在庫がありません。」という結果になってしまいました。D40用のFFフィルターは、もうどこにも無いようです。
色々と教えて頂いたのに、それを生かせなくなってしまいました。
大変、お手数をおかけしました。
投稿: ATSUJIRODESU | 2012年2月 2日 (木) 23時57分
ほんまか様、はじめまして。
outsiderと申します。天体写真歴は銀塩時代から長いのですが、画像処理は最近始めた初心者でいつもブログで勉強させていただいています。本当に「目から鱗」というような記事が多くいつも楽しみにしております。ところでもう4年も前の記事になりますが、R64によるL-RGBのところでどうしてもわからないことがあり、勇気をもって質問させていただきました。(以下です)
Hαフィルター(半値値6nmのastronomic社のもの)で撮影した画像から白黒の画像を作成し、ノーフィルター画像(カラー)を白黒にして合成してL画像として、ノーフィルター画像(カラー)とL-RGB合成してみました。
結果は本来の赤い星雲が赤と白が混じったような微妙な色に見えます。L画像には色がないので、ノーフィルターのカラー画像にない部分が写っている場合(Hαフィルター画像のほうが、赤い星雲がカラー画像より良く写っている場合)は、そのままL画像の白色が合成されてしまうのではないかと思いました。
この考え方は正しいでしょうか?もし正しい場合はHαフィルターの画像のみに描写されている星雲もカラーで合成することは可能なのでしょうか?
よく理解していない質問かもしれませんが、よろしくお願い致します。
投稿: outsider | 2014年1月 4日 (土) 22時54分
outsidrさん、はじめまして。
勇気をもって質問をすることはないですよ。気軽に質問してください。
さて、ご質問の件ですが、
赤と白が混じったような微妙な色とありますが、
どのように混じっているかによって回答が違います。
赤い星雲がピンク色になる場合ですが、
これはL画像の輝度が高すぎます。L画像の明るさを落とすなどの工夫が必要です。
次に赤と白がまだらのようになっている場合ですが、
白い部分はおっしゃるように、カラー情報がない
部分だと思います。
ただ、Hアルファとノーフィルターの露出の比率が極端に大きくない限り、つまりノーフィルターの露出が少なすぎない限り、そのようなことはあまりないと思います。
もしそのようになったら、ノーフィルターの露出を増やすか、画像処理であまり星雲を強調しないことです。
投稿: ほんまか | 2014年1月 4日 (土) 23時12分
それから、
Hαフィルターの画像のみに描写されている星雲もカラーで合成することは可能なのでしょうか?
ですが、可能な方法もあります。L-RGB合成ではなく、
ノーフィルター画像のRチャンネルのみにHアルファ画像を加算するまたは、比較明合成するという手があります。
ただ、どちらも私はあまり好きになれません。赤が強すぎてしまうんです。
やはり、カラー情報に見合った画像処理を心がけるのが良いと思います。
投稿: ほんまか | 2014年1月 4日 (土) 23時20分
早速のお返事ありがとうございました!
大変よくわかりました。さすがだなあと思います。質問の件はピンク色でかつ赤白がまだらなので両方ですね。(光害の激しい横浜自宅からのテスト撮影であったため、カラー画像の露出が短すぎたようです)
いただいたアドバイスで再度、条件の良いところでチャレンジしてみます。
投稿: outsider | 2014年1月 5日 (日) 10時37分