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2010年8月25日 (水)

「ワンランクアップの星野写真その6」ほんまか流コンポジット

今日はコンポジットについてお話したいと思います。コンポジットの基本的な方法は「デジタル星野写真入門」で説明したので、ここでは、ほんまか流コンポジットということで、私のコンポジット法を紹介します。

その前に加算コンポジットと加算平均コンポジットについて

加算コンポジット
 両方の画像を単純に加算します。ただし、ヒストグラムの山が中央にある2つの画像を加算しただけでは画像は飽和してしまいます。そこでレベル調整で輝度レベルを半分にすると、加算平均コンポジットとまったく同じになります。そうではなく、後で説明する「デジタル現像」を使うと、飽和を抑えながら、淡い部分のレベルを上げられます。

加算平均コンポジット
 2つの画像を加算して2で割ったコンポジットです。上記加算コンポジット後にレベルを半分にするのと同等です。
 主にノイズレベルを半分にするため、この加算平均コンポジットが利用されます。また加算平均すると端数ができますが、画像処理の階調ビット数が高ければ端数はそのまま階調の豊かさにつながります。
 理論的には、加算平均すると階調が1ビット増えます。デジカメのもともとの階調を14ビットとします。フォトショップの画像処理の階調を16ビットすれば、2段の加算平均コンポジットで16ビットになります。それ以上やってもノイズレベルは少なくなりますが、階調は増えません。(この理屈は本当でしょうか?ちょっと自信がありません)

コンポジットのトーナメント方式
 「デジタル星野写真入門」でも説明しましたが、私はコンポジットするときにに2枚ずつのトーナメント方式を採用しています。理由は2枚ずつ手動で合わせた方が正確だからです。複数枚の場合、ステライメージのバッチ処理を利用しますが、正確性がちょっと疑問ですし、私の非力なパソコンでは非常に遅いです。

Comp5  トーナメント方式の場合、コンポジット枚数は2の累乗になります。2,4,8,16等、2の累乗でなくても加重平均を使えばコンポジットできますが、重みを計算しなければならなので、ややこしくなります。今回は説明しません。

コンポジットはやっぱりステライメージ
 コンポジットはステライメージが便利です。0.1ピクセル単位、回転は0.01度単位で正確な重ね合わせができます。また「加算コンポジット」時も飽和による情報カットがないままデジタル現像に持ち込めます。

以上を踏まえた上で、「ほんまか流コンポジット」を説明します。
ことのおこりは、「北天の分子雲」を仕上げているときでした。このときは何十枚もコンポジット用に撮影しました。私は当初から加算平均コンポジットをずっと利用していました。ところがコンポ段数が3段(8枚)くらいになると、それ以上コンポしても、淡い部分はあまり出てこないのです。ノイズレベルは確かにコンポを重ねれば減るのですが、淡い部分は何枚コンポジットして強調処理しても出てきません。

そこで加算平均はやめ、「加算コンポジット+デジタル現像」を繰り返して、コンポをしたのです。そしたら今度はノイズまで強調されたようで、背景がざらざらでした。

そこで、3段(8枚)までは加算平均コンポジットでノイズを減らし、それ以後は「加算コンポジット+デジタル現像」をするようにしました。そしたら、ノイズも十分少なく、淡い部分も良く出る写真になったわけです。

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ただし、この方法はコンポ枚数が8の累乗でなければなりません。つまり8、16、32枚でなければなりません。加重平均を使うなら、この枚数にこだわる必要はありませんし、ISO感度が低く低ノイズならば、最初の加算平均の枚数は4枚でも2枚でもいいわけです。冷却なら加算平均のところはそもそも必要ないかも知れません。そしたら、単なる「加算コンポジット+デジタル現像」と変わりありません。

(私は、ノイズを減らすために8倍の撮影時間をかけていることになります。逆に言えば、ノイズが十分低い冷却系(デジカメもCCDも)なら1/8ですむことになります。)

この私の方法が理論的に合理性があるかどうかわかりません。ただあの「北天の分子雲」はこのコンポジット方法によってやっと完成しました。それ以後、このコンポジット方法を使用しています。

デジタル現像について

 デジタル現像は、ステライメージの機能で、低輝度部分の輝度をそのままに高輝度部分の飽和を抑えることができます。

 デジタル現像については、ステライメージのマニュアルに詳しく書かれています。ここでは一例を示します。デジタル現像は下図のようにちょっと寝ぼけた感じくうらいにするのが、あとあと、フォトショップでの処理が楽になります。特に星の中心部が真っ白にならないようにすると良いです。

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次回はフラットについて

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コメント

おお!
今回はほんまかさんのあの驚異的な北の分子雲。なぜあれほど鮮やかに出せたのか、その秘密の一端を公開なのですね!
いくらコンポジット枚数を稼いでも絶対あれほど出ないと思っていました。0はいくら重ねたって0ではないかと。
まさかこんな手法があったとは…目からうろこです。
0ではないんですね、ほんのちょっと存在する情報をデジタル現像であぶり出し荒れた分をさらにコンポジットで滑らかにするとは。発想力の違いですね。凄いです。
しかし必ず2のn乗撮影しなくてはいけないと言うのがつらいですね。天候が不安定な今は途中になってしまう事も多いのではと思います。
私は最近撮影枚数が予定に達しない事ばかりなのでたいてい加算でコンポジットし後で枚数で除算しています。
位置合わせは私もステラのポイント指定が信頼おけないので手で合わせています。
基準画像を一つ作りそれにすべての画像を合わせこんでいます。コンポジットの加重平均を100%にして合成すると位置だけ基準画像にあった状態になります。よっちゃんさんが思いつかれた手法を使わせていただいてます。
でも面倒なので自動で位置合わせだけしてくれるマキシが便利ですね。しかしうまく出来ない事が多く最後はステラの手動になっちゃう事も多いです。

投稿: T-Fix | 2010年8月26日 (木) 18時27分

T_Fixさん、連投ありがとうございます。

このコンポジット方ですが、よくよく考えれば大した話じゃないんですよ。ノイズが多いから加算平均してから、加算コンポして、デジタル現像する、ただそれだけなんです。

加算平均だけだと、端数が切り捨てられるので、淡い部分の情報がなくなってしまうと思うんです。
加算コンポなら、淡い部分の情報はどんどん加算されていきますからね。
それにデジタル現像が星の飽和を抑えられるので、星を奇麗に表現したいなら、これですね。

投稿: ほんまか | 2010年8月26日 (木) 22時28分

2の累乗問題については、私も、予定通り撮影できなく、2の累乗にならない場合があります。
その場合は加重平均を利用しています。たとえば2枚加算平均したものと、1枚のものをコンポする場合は、33%の加重平均でコンポしています。

よっちゃんさんの位置合わせを100%加重平均でしておいてから、バッチでまとめて加算平均する方法は、素晴らしいアイデアですね。ほんと、みんなつわものですね~。関心してしまいます。私もこんどやってみよう。

投稿: ほんまか | 2010年8月26日 (木) 22時41分

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