「ワンランクアップの星野写真その7」フラット補正
フラット補正の定義
フラット補正とは、光学系の周辺減光による画像周辺の輝度低下を補正するものです。一様な光源(たとえば青空、発光パネル、パソコンモニタなど)を撮影し、これをフラットフレームという、撮影画像をフラットフレームで除算します。
これで、周辺減光が補正されるほか、C-MOS上についたゴミの跡まで補正してくれます。(ただし、すべてのゴミを補正する場合は撮影直後のフラットの撮影が必要)
以上がフラット補正の定義ですが、この連載では「フラット」の意味を広く解釈し、光害によるカブリやその他ムラなどをならす処理を含めてフラット補正ということにします。
フラット補正の重要性
なぜ、フラット補正が重要かというと、以前にも書きましたが、フラット精度が高いほど、より強調処理ができるからです。今、星雲を強調しようと輝度の低いところと高いところで輝度差を10倍にコントラストアップしようとします。そうすると同時に周辺減光もカブリもその他のムラも10倍に強調されてしまいます。これではとても綺麗な写真とは言えません。実際には単に美しさの問題だけではなく、明るい部分が飽和してしまうので、そもそも強い強調処理自体ができなくなります。
ですから、フラット補正は単なる周辺減光を緩和する処理ではないのです。
フラット補正が不十分なまま強調処理するとこうなってしまう。(北極星周辺の星雲)
フラット処理の実際
このフラット処理を精度良くやろうとすれば、RAP2というソフトを使い、RGB各色で撮影画像と同じ相対輝度レベルをもつ光源を作成撮影し、現像前にフラット補正する必要があります。
ただ、私の場合は、ここで懺悔しますが、このような「ちゃんとしたフラット補正」をしていません。かなりいい加減なフラット補正です。どこがいい加減かというと、
RGBカラーのRAP2ではなく、ステライメージのモノクロフラットです。
フラットの撮影はパソコンのモニタを撮影したものを加算平均しています。
フラット補正は現像前ではなく、現像後にしかも8枚の加算平均コンポジット後に行っています。
フラットは一度撮ったら使い回しです(ゴミ跡は取れない)。
私は、今まで広角星野写真を撮ってきたので、あまり強い強調処理というのはやったことがなく、フラットの重要性もそれほど感じていませんでした。ところが今年から中望遠の星野写真を撮るようになって、星雲の強調処理も必要になり、やっとフラット補正するようになりました。で、まだ始めたばかりなので、いい加減なのですが、そのうちRAP2を使ったちゃんとしたフラット補正もしてみたいと思います。
ただ、こんないい加減なフラット補正でも、「やらないより、全然効果あります」
ちゃんとしたフラット補正については私は説明できないので、他の方のホームページやブログなどを参考にしてください。ただ、私のようにフラットは面倒だという方のために、私の方法を説明しておきます。ほんと簡単です。これでもやらないより全然いいのですから。
いい加減なフラット補正方法(良い子のみんなは真似しないで)
1 パソコンのモニタ画面に白紙ファイルなどを表示させます。
2 それを撮影しますが、ピントは無限大の位置、絞りは星の撮影と同じ値、感度は自由、シャッター速度は、ヒストグラムの山のレベルが、星の画像と同じくらいのレベルになるようにします。(つまり中央付近)
3 フラットはできるだけ一様になるように後で加算平均しますので、モニタ上の撮影位置をランダムに変えながら、数枚から数十枚撮影します。私は16枚撮影します。
4 以上の手順を、良く使う絞り値の分だけ繰り返します。私の場合はF2.8、F3.5、F4の3種類で撮影しました。
5 撮影が完了したら、次はフラットフレームを作成します。まず、現像します。現像はどんなソフトでも良いのですが、各色のヒストグラムの山が一致するように現像します。コントラストなどのパラメータは0です。(つまり星の場合と同じ)
(本来フラット補正は、光源の輝度と撮影された画像の輝度が線形関係にないとできないと思うのですが、現像してしまったのではこの線形関係が崩れると思います。しかし、逆に現像することによってRGBのレベルをそろえることができます。現在この方法でフラット補正による色ムラや輝度ムラに悩まされることはありません。結果オーライということで)
6 現像したら、ステライメージ等でコンポジットします。位置合わせは必要ないので、ステライメージのバッチ処理でコンポジットすれば楽です。
7 最後に、できたフラットフレームを使って、フラット補正します。フラット補正は本来、コンポジット前に一枚ずつ行うのですが、私の場合面倒なので、8枚の加算平均コンポジットが終わった画像に対して行っています。加算平均では周辺減光の量に影響がないからです。
具体的な方法は、ステライメージを使います。フラット補正したい画像を開き、(画像)→(ダーク/フラット補正)を開きます。
フラットフレームの画像ファイルを指定して(OK)をクリックすれば完了です。
これで、フラット補正すると、ほぼ完璧に周辺減光等が補正されます。最初やった時は感動しました。露出不足のときなど、ヒストグラムの山のレベルがフラットフレームと一致していない場合はうまく補正できない時があります。このような場合はフラットフレームを撮影し直すべきなのですが、それさえも面倒な私は、「レベル調整」でフラットフレームのレベルを下げたりしています。それでも出来ちゃったりします。
かなりいい加減ですが、とにかくこれで出来ています。思うに、私の場合は以下のような事情があるからでしょう。
1 開放で撮ることはない。一段~二段絞って撮るので周辺減光が少ない。
2 R64フィルターを併用しているので、カブリによる中央集光が少ない。
3 それほど、強調処理しない。
3は重要で、逆にみんなは、「そこまで正確なフラット補正が必要なほど、そんなに強調処理しているの?」と不思議に思ってしまいます。だからみんな”冷却”、”冷却”と言うのでしょうか?
とりあえず、フラットやったことのない人は難しいこと考えずに私のように気軽に始めてみてはいかがでしょうか?効果ありますよ。
次回はヒストグラムについて。
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コメント
うーん、加算平均後のフラットですか!
これまた目からうろこです。
もうほんまかさんの講義から目が離せません。
いや、手抜きとかではなくしっかり結果が出ているわけですから凄いメリットがあるんだと思います。
実際私がフラットで困る時は、撮影した画像、一枚一枚の空の色が変って行く時なのです。月が出てきたり、薄明が始まっていたり、透明度が変ってきたり…。
それに合わせてフラットを撮り直すなど実際問題として不可能です。
微妙に変化するカラーバランスを無視して一種類のフラットで一枚一枚フラット処理すると微妙に違った色むらがある画像が出来上がるんですね。それをコンポジットするとどうなるか…。結果不規則で修正不能の色むらがある画像が出来上がるんです。
これは処理が非常に厄介です。
コンポジット後の画像でフラット処理すれば、その問題だけは回避できそうですね!単純なむらなら補正も簡単ですし。
この手技もまた試させていただきます、ありがとうございます。
投稿: T-Fix | 2010年8月26日 (木) 19時16分
T_Fixさん、私のどうしょうもない、手抜きフラットに無理やり賛同してくださり、恐縮です。
ほんとに手抜きで、T_Fixさんのように真面目にフラットを研究されている方に申し訳ないです。
私のフラット方法には何のメリットもないと思いすよ。
加算平均後のフラットも単なる手抜きです。
ただ、現像後のフラットフレームの作成はレベルを自由に変えられるので、これだけは便利だと思います。しかし、正確性では問題あるでしょうね。事実、過補正になることがたまにあります。
ほんとにいい加減で申し訳ないです。
投稿: ほんまか | 2010年8月26日 (木) 22時33分