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2010年8月18日 (水)

「ワンランクアップの星野写真1」赤道儀あれこれ

この連載の趣旨は、題名の通り、星野写真のレベルをワンランク上げようというものです。で、その方法で最も手っ取り早いのが、機材をアップグレードすることだと思います。ちょっといきなり安直ですが。。。

そこで初回は、機材について思うことをいくつか書いて見たいと思います。まぁ適当に読み流してくれればいいです。

●赤道儀

 赤道儀はカメラやレンズなどの話題に比べては少し陰が薄いように思えます。しかし、赤道儀をアップグレードすることによる作品レベルの向上はけっこうあると思います。特にベテランほど赤道儀を重視しているように見受けられます。
 単にガイド性能が良くなる以上の効果が、精神的な面も含めて、あると思います。ですから、もし作品レベルの向上に悩むようであれば、思い切って赤道儀をワンランクアップしてみるのもいいかと思います。

 どんな赤道儀がいいかは人それぞれですが、頑丈で大きな赤道儀ほど安定感があってよいと思います。ただ、むやみに大きくても移動が大変だけになってしまいます。星野写真ということであれば候補に挙がる赤道儀としては

ビクセンGP2ガイドパック(http://www.vixen.co.jp/at/at-other1.htm
ケンコースカイメモ(http://ec1.kenko-web.jp/category/305.html
ビクセンGP2赤道儀(http://www.vixen.co.jp/at/gp2.htm
タカハシP2Z赤道儀(販売終了、中古で探す)
タカハシEM11赤道儀(http://www.takahashijapan.com/products.html

 あたりでしょうか。望遠鏡を使った撮影もするならタカハシのEM11やビクセンGP2あたりになると思います。最初の2つはいわゆるポタ赤といわれるものです。

 ポタ赤(=ポータブル赤道儀)の中でも特に小型で自由雲台を使って撮影するものがあります。具体的な製品名はだしませんが、
 ある程度のレベルの天体写真を継続して撮影していこうと思ったら、これらのポタ赤は使わない方が良いでしょう。

 これらのポタ赤は携帯性にすぐれ、設置もお気軽でよろしいのですが、たまにちょっと星野写真でも撮ろうとか、そのレベルならまったく問題ありませんが、継続して入選を狙うようなレベルの写真を撮り続けようとしたなら、やはり避けた方がいいでしょう。

 理由はいっぱいあります。

そもそもそんなに小さくなくて良い。
 ポタ赤をリックに背負って山に登るならまだしも、今はたいがい遠征地に車で移動し、車の近くで設置すると思います。ならばそれほど小さく軽い必要はまったくないです。

安定感がない
 これら小型のポタ赤に必ずと言っていいほど付く枕言葉があります。「おきらく」とか「お気軽」です。しかし、実際に撮影してみると全然お気軽ではありません。赤道儀は重いほど安定感があり、操作は逆に楽になります。(設置は大変ですが)
 軽くて小さい赤道儀は重心が低く構図が決めにくく、ちょっとぶつかっただけで、極軸がずれます。
 大きい赤道儀は確かに設置が大変です。でもオートガイドするわけでもなく簡単なノータッチガイドならせいぜい10分もあれば設置できるでしょう。しかし、その後の撮影は楽です。設置は数分の努力です。しかし、その後の撮影は何時間も続くわけです。
 それでも小型の方がいいという方はそもそも、星野写真なんて、数分の露出で数枚コンポすればいんでしょ。ぐらいの感覚だと思います。それはそれで別に悪いことではありません。それも一つの楽しみ方です。ただそれは今回の連載の趣旨とは違います。私の作品を見てもらえれば分かると思いますが、総露出時間が2時間を超えるものばかりです。

 ただ機材には機能性や性能だけでは、図れない何かがあることは確かです。(かっこいとか、おしゃれとか) 私だって、大型の方が言いといっておきながら、結局小型のスカイキャンサーを使っているわけです。ほんとだったらP2クラスがバランス的にも良いのですが。(実はこのスカイキャンサーには思い入れがあるのです。)

 ただ、それらすべてを考慮したとしても、使いたくないのが、「自由雲台」です。むしろ小型ポタ赤が悪いのではなく、この自由雲台の方に諸悪の根源があると思います。自由雲台の弊害は次のようなものです。

構図が決めにくい
 小型ポタ赤の場合、重心が低く、カメラは当然上を向いています。つまり構図を決めるため、下から見上げるようなかっこうになるわけです。場合によっては寝っころがった状態になると思います。この状態で、右手でカメラを持って、左手で自由雲台のロックレバーを操作するわけです。カメラの向きによってはもう「腹筋体操」状態です。
 それに自由雲台って、ロックすると微妙に構図がずれたりします。広角なら問題ありませんが、中望遠あたりになるとけっこうわずらわしくなります。

 いっぽう、普通のドイツ式の赤道儀の場合はどうでしょう。バランスをとってあれば、クランプフリーにしても動きません。片手でカメラを持ちながら、微妙な構図合わせしながら、構図が決まったらゆっくりロックすればいいのです。途中でカメラを放しても動きません。楽ですよ。

構図の再現性が低い
 撮影前にステラナビゲーター等で構図の確認することがあるでしょう。でその通り、現場で再現するのは自由雲台の場合、けっこう難しいです。(この構図どおりカメラを傾けたらぶつかったなどの経験があると思います)
 また、撮影が天候の悪化等で二晩がかりになることもあると思います。こういった場合、前回の構図を再現するのは自由雲台の場合難しいです。(ちょっとでもずれると、レンズの歪曲のためコンポで合わないことがあります)

 いっぽう普通のドイツ式の場合は、基本的に構図を再現するには一点で合わせればよいので、明るい星を基準にしてだいたいこの辺ということで合わせれば楽です。

やっぱり構図がへん
 星野写真の場合、構図の縦横を赤経緯線に合わせるのが慣例です。必ずそうしなければならないことはありませんが、やはり見慣れているせいか安定感があります。自由雲台を使った場合この赤経緯線に合わせるのが難しいです。ですから、自由雲台で撮られた写真のほとんどは見ればすぐわかります。ほとんどの構図が撮影者の独創です。中にはすごい、絶妙、と思えるものもあるのですが、逆に???と思ってしまうものもあります。他の部分が素晴らしい場合はもったいないな~と素直に思ってしまいます。

長時間撮影に向かない
 基本的に自由雲台というのはバランスという概念がありません。常にバランスが崩れた状態です。本格的な写真を撮ろうとした場合に、総撮影時間は数時間におよぶ場合がありますが、自由雲台の場合、数時間におよぶガイドには向かないと思います。カメラが途中で何かにぶつかったり、極端にバランスが崩れた状態になったりします。 

 繰り返しますが、この連載は数時間におよぶ撮影をして入選レベルの写真を撮ろうというものです。けして数分程度の簡単天体写真講座ではありません。それは前回の「デジタル星野写真入門」で十分です。事実前回は使用機材のモデルとして自由雲台も取り上げていました。ですから自由雲台を完全否定するものではありません。

 また、数時間におよぶ撮影(私はせめて一時間くらいは撮影して欲しいと思うですが)も面倒だからという方は、今後この連載を読んでもあまり恩恵はないと思います。この後、星雲を強調するための画像処理を紹介しましすが、星雲が浮き上がってくるのは、画像処理が素晴らしいのではなく、長時間撮影した結果の画像だから星雲が浮き上がってくるのです。ですから、僅か数分の画像を使って、私がこれから紹介する画像処理方法を追試したとしても何も出てきません。

次回はカメラについてぐだぐだ。

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コメント

ほんまかさん
うんうん、なるほど、そうですよね。やっぱりこだわっていますね。数夜にわたる撮影からの合成は、どうするんだろうと思っていましたが納得しました。おそらくピント合わせなんかも、、、楽しみです。そして感心させられます。

投稿: 天狼星 | 2010年8月18日 (水) 21時58分

天狼星さん、つまらん記事に相づちうってくれて恐縮です。
少しでも長続きするように頑張りたいと思います。

投稿: ほんまか | 2010年8月18日 (水) 22時18分

始まりましたね
早速、読ませていただきました。

赤道儀のチョイスについてはまったく同感です。
アナログ時代からちゃんとした?写真を撮りたい時、
私はGN-170を使います。
たとえ広角~標準レンズでもです。
ホタ赤とは安定感がまったく異なるからです。
構図合わせも抜群に楽チンになります。
もちろん、ほんまかさん同様、お気楽も否定はしません。
だから、そういう機材も持っています。

私がコメントできるのは今のうちです。
だんだん高度になると、たぶん無口になります

投稿: 星のおじさん | 2010年8月18日 (水) 23時14分

星のおじさん、こんばんは。
星のおじさんのようなベテランの方に同調していただき、ほんと勇気づけられます。
自分でも、こんなこと言って大丈夫かなーと不安になるのですよ。

これからもバックアップよろしくお願いします。

それにしてもGN-170とは、本格的ですね。

投稿: ほんまか | 2010年8月18日 (水) 23時24分

この間(先週木曜日の晩)湯の丸にいたということで、ちょうどその晩僕も湯の丸にいたのですよ。びっくりしました。
電話しようと思ったんです、湯の丸というとほんまかさんのイメージが強かったので。
でも、そのときは思いとどまりましたが電話しとけば良かったかと後悔。
結局、深夜11時頃には高速に乗って愛知方面に車を走らせてました。

赤道儀・画像処理の連載、楽しみにしています。

投稿: よっちゃん | 2010年8月19日 (木) 00時45分

よっちゃんさん、その日、湯の丸に居ましたか。
それは残念ですね。
私もよっちゃんさんのことが頭をよぎったのですが、天気予報も悪かったので、まさか来ているとはおもいませんでした。

湯の丸は湯沢に次いで家から近いので、けっこうブラーっと行くんですよ。

こんどから、遠征行く時は、ブログに「○○へ行きま~す。」と書くことにします。

投稿: ほんまか | 2010年8月19日 (木) 01時00分

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