「ワンランクアップの星野写真15」カラーノイズの除去
前回は、ノイズの除去、軽減についてお話しました。今回はカラーノイズです。カラーノイズとは、偽色やホットピクセルですが、天体写真的にいうなら、星のまわりの色ニジミです。パープルフリンジ、赤ニジミで、青ハロなども広い意味で含めることにします。
カラーノイズは、フォトショップの(フィルター)→(ノイズ)→(ノイズを軽減)でだいぶとれますが、さらに強力にとる方法を説明します。色解像度が落ちることを無視すれば、いくらでもとることができます。
前回のノイズはいわゆる輝度に関するノイズでこれを除去するのに、ダスト&スクラッチを利用しました。今回は色に関するノイズでやはりダスト&スクラッチを利用します。
その前にフォトショップCSのLabモードについて説明しましょう。通常はRGBモードで、R/G/Bの各色の輝度で画像を表現します。まず下のいつもの画像を見てみましょう。
ちょっと赤の彩度が低いように思います。もうちょっと赤々させたいです。レイヤーパレットの横のチャンネルパレットで「レッド」を選択し。、「明るさ、コントラスト」で強調して見ます。
好みの赤に近づけようとすると、全体の輝度まで上がってしまうことが分かります。これを避けるには、他のチャンネルの輝度を下げる必要があります。つまり赤だけコントロールしたいのに、他の色も操作しなければならないことが分かります。
一方、Labモードは、輝度の情報を持ったLチャンネルと、(赤み-緑み)をあらわすaチャンネル、(黄色み-青み)をあらわすbチャンネルで画像を表現するものです。輝度の情報と2次元の色の情報が完全に分離しているのが特徴です。
Labモードにするにはすべてのレイヤーを統合後、(イメージ)→(モード)→(Labカラー)とします。チャンネルパレットでLのチャンネルを選択すると、輝度チャンネルです。
これは通常のRGB画像をモノクロ化したものに他なりません。
次に、aチャンネルを選択してみます。
明るい部分が赤が強い部分です。暗い部分が緑が強い部分です。ここの明るさは実際の明るさとはまったく関係ありません。
同様にbチャンネルを選択してみます。
明るい部分が黄色みが強い部分です。暗い部分が青みが強い部分です。やはりここの明るさは実際の明るさとは何の関係もありません。さて、中央やや右上に暗いドーナッツ状の輪ができています。暗いのは、暗いという意味ではなく、青が強いということです。つまり、青ハロの部分です。これを覚えておいてください。
さて、すべてのチャンネルを表示させた後、aチャンネルを選択して見ましょう。
ここで、(イメージ)→(色調補正)→(明るさ・コントラスト)で明るくして見ましょう。
aチャンネルを明るくするということは、赤みを強くするということです。今度は暗くしてして見ましょう。
aチャンネルを暗くするということは、画像を暗くするのではなく、緑みを強くするということです。
さて、ここまで準備できたら、星雲を赤々させることは簡単ですね。画像を全体的に明るくするのではなく、赤い部分はより赤く、そうでない部分はよりそうでない(へんないいかただが、緑の部分がないのでこのような表現になってしまう)、つまりaチャンネルのコントラストを上げればよいのです。
この操作によって輝度は変化しません。一般に
赤-緑の彩度を上げるには->aチャンネルのコントラストを上げる
赤-緑の彩度を下げるには->aチャンネルのコントラストを下げる
黄-青の彩度を上げるには->bチャンネルのコントラストを上げる
黄-青の彩度を下げるには->bチャンネルのコントラストを下げる
という関係が成り立ちます。
ですから、たとえば、青ハロが目立つようなら、青の彩度を下げてみるといいでしょう。それではbチャンネルのコントラストを下げてみます。
確かに、矢印の部分の青の彩度がおちました。このときのbチャンネルを見ると、確かに暗い輪が薄くなっています。
この輪が完全になくなれば青ハロは消えます。しかし、まったく平坦にしてしまうと、画像から青み、と黄色みが消えてしまいます。カラーノイズはたいがい局所的なものです。つまりbチャンネル全部を平坦にする必要はなく、その部分だけ平坦にすればよいのです。つまりぼかせばいいのです。実際にはダスト&スクラッチを使います。
よって、
赤ニジミを軽減するには->aチャンネルにダスト&スクラッチ
青ニジミを軽減するには->bチャンネルにダスト&スクラッチ
実際にやってみましょう。左下の星の周りに色ニジミが見られます。
aチャンネルにダスト&スクラッチを10ピクセル(実際の値はカメラの画素数により異なる)
bチャンネルにダスト&スクラッチ10ピクセル
色ニジミが完全に消えました。局所的には彩度がなくなりますが、全体的に見れば色みが変わる事はありません。輝度も変わりません。
カラーノイズの除去が完了したら、通常のRGBカラーに戻す必要があります。
次回は、シャープ系フィルター処理です。
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コメント
Labカラーでの滲み消しは本当に効きますね。
現行のカメラではピント合わせがシビアで今のところどうしても青い輪が星の周囲にできてしまいます。ピント合わせをどこまでシビアにできるかに掛かっているような気もするのですが、撮ってしまった写真はなんとか形にしたいのでホントに重宝しています。ありがとございます。
あと、今出ているに滲みですが、色は水色から薄い青みたいに視えるのですがbチャンネルでは輪は見えずaチャンネルに輪が見えていてダストスクラッチをaチャンネルにかけると実際に滲みは綺麗に消えてしまいます。aチャンネルは赤-緑系の筈なのにというのが今のところの謎です。Hαの赤い部分はaチャンネルで見えていますから確かにaチャンネルは赤-緑なのですけど...。
投稿: higurasias | 2010年9月19日 (日) 18時58分
higurasiasさん、こんばんは。
labモードによるカラーノイズの除去は、天体写真だけでなく、一般写真でも使われる定番の方法のようです。検索するといっぱい出てきます。
星の周りのニジミですが、完全な青のものは少なく、赤みが混ざったマゼンタ系のニジミがあるようです。
その場合はaチャンネルとbチャンネル両方になります。
aチャンネルに輪が見えてるなら、やはり赤みの強いニジミということになるのですが、それが真っ青に見えるなら、確かに不思議ですね。
投稿: ほんまか | 2010年9月21日 (火) 22時13分