「ワンランクアップの星野写真その17」トーンカーブの基本
トーンカーブの重要性
今日から数回にわたりトーンカーブについて説明します。フォトショップエレメンツにはこのトーンカーブがありません。今回の連載で使用するソフトをフォトショップCS系にしたのは、このトーンカーブがあるからです。
それほど重要なわけです。フォトショップエレメンツにも「明るさ・コントラスト」なるコマンドがあります。でもこれでは絶対できない操作があるわけです。
たとえば、画像を明るくすると言った場合、明るい場所をより明るくするのか、暗い場所を明るくするのかでは、全然意味合いが違ってきます。このような細かな操作ができるのは、トーンカーブ以外にありません。
次のような天体写真
1 背景が黒くしまり、星雲の暗部がつぶれ、明るい飽和部分が多いやたらコントラストの高い画像。
2 星がカリカリしてただの点のようで、背景がざらざらしてしている
3 色むらやカブリが目立つ
このような症状の原因の一つに、トーンカーブを使っていないか、あるいは使っていても、使い方を間違っているケースがあります。
トーンカーブを使えば、階調の滑らかさを維持しつつ、必要な部分だけに強調処理をすることができます。
トーンカーブの基本
トーンカーブの画面は次のようなものです。横軸は現在の階調で右へ行くほど、輝度が高くなります。縦軸は修正後の諧調で上へ行くほど輝度が高くなります。輝度レベルは最低0で最高255であらわします。
まだ何もしない場合は、補正前の輝度=補正後の輝度ですから、トーンカーブは上記のように45度の直線になります。
この直線を変形させることによって、画像を補正します。簡単な例を示します。
まず、マウスでこの直線を上に持ち上げて見ましょう。この操作は画像を明るくする操作です。
今度は、逆に押し下げて見ましょう。これは画像を暗くする操作です。
マウスで曲線をクリックすると、点が打たれます。この点をポイント(またはアンカー)といいます。ポイントが打たれると、そのポイントをマウスでドラッグすることにより曲線を変形できます。また、ポイントは他のポイントが移動された場合もこのポイントだけは移動しません。ですから、ポイントは不動点の意味合いもあります。
さて、今度は次のように2箇所を変形し、緩やかなS字にしてみましょう。これはトーンカーブの基本中の基本、つまり画像のコントラストを上げる処理です。
「コントラストを上げる=S字カーブ」と覚えましょう。実はこのS字カーブ、奥が深いんです。
実は、この曲線の接線の傾きがコントラストをあらわします。そして
傾きが急=コントラストが高い
傾きが緩やか=コントラストが低い
の関係にあります。
つまり、S字カーブは画像全体のコントラストを上げるのではなく、中間調の部分のコントラスト上げ、逆に、暗い部分と明るい部分のコントラストを下げるといえます。
なぜ、全体のコントラストを上げないのでしょうか? そこで、等間隔に並んだ階調(つまり輝度情報の間隔)がS字カーブによってどのように変化するか見てみましょう。
コントラストが高いということは階調の間隔が広いということです。逆にコントラストが低いということは階調が詰まっているといえます。階調数を補正前と補正後で普遍にするならば、つまり情報落ちがないとするならば、どこかの階調を広げたならば、どこかの階調を詰めなければなりません。いいえ変えれば、どこかのコントラストを上げたなら、どこかのコントラストを下げなくてはいけません。この難しい屁理屈がS字カーブなのです。
単に、トーンカーブの曲線を傾けただけなら必ず情報落ちが発生します。
トーンカーブで絶対にやってはいけない操作があります。下図のように右肩下がりの曲線です。これは階調の逆転現象がおきますので、絶対にやってはいけません。
また、下図の矢印の部分は通常は動かしません。このポイントは輝度255、つまり飽和点であり、真っ白な状態です。つまり、「真っ白な部分は常に真っ白であり、また真っ白でない部分が真っ白になることはない」ということです。(この点を左に動かす操作はあるかも知れない、ただそれはレベル補正と同じ操作になるので、トーンカーブ独自の操作としてはあまりない)
下図の操作は、飽和点を255より下げることになり、画像の一番明るい部分が真っ白ではなくグレーにすることである。これは階調を有効に使わないことだから、このような操作は普通は行わない。
下図の操作は、たとえば輝度200以上をすべて飽和させてしまうような操作です。前述したようにトーンカーブの操作としてはあまりしない。
最後のポイントの打ち方を説明しておきます。通常はマウスでクリックすればよいのですが、画像の該当場所から輝度をひろってくるには、Ctrlキーを押しながら、画像の該当場所をクリックしてください。
これで、そこに対応した輝度の部分にポイントを打てます。またポイントはマウスのドラッグだけではなく、矢印キーでも移動できます。(削除はDELキー)微妙な操作が必要な時は、矢印キーを使うと良いでしょう。
次回はトーンカーブ操作の具体例を示したいと思います。
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