「ワンランクアップの星野写真その18」トーンカーブの例S字
それでは今日はトーンカーブの例として、コントラストアップ、つまりS字カーブについて説明しましょう。
題材は最近撮ったこれ。
天体写真の元画像って、こんなに眠たいのです。そこでトーンカーブ一発でコントラストアップしてみましょう。つまりS字です。しかし、S字って一言でいったって、それは様々です。
普通にやるとこんな感じ。ちょっと暗いですか? 天の川をもっと出したいですか?
ならば、こんな感じ。
だいぶ、はっきりしてきました。でも星がカリカリしてませんか?
どちらが良いかは人それぞれ、美的感覚の問題ですから、どちらが良いとはいいません。ただ、次の点ははっきりさせておく必要があります。
1 やろうとしていることの方向性、目的
抽象的な表現で言っても仕方がないので、はっきりいうと、次のようなヒストグラムを作ることが目的です。
つまり、ヒストグラムの山の左側をあまり太らせないで右側を太らせる。私があまりにもヒストグラムの山の形にこだわりすぎていることに対する異論もあることでしょう。でもそれ以外に客観的な指標ってありますか? だれもが理解でき、再現できる方法があるでしょうか?
2 やっていることを理解する
S字カーブなんて、だいたい表現が抽象的過ぎます。そこでまず私の例を見てください。
私は普通トーンカーブ一発でコントラストアップはしませんが、もし、画像処理がトーンカーブ一発しか許されないなら、次のようにします。
もっとはっきり天の川を出したい欲求にかられますが、トーンカーブ一発ならこれが限度と思います。さて問題は上記のS字カーブです。
実はこれは3つのことをいっぺんにやっているのです。だから抽象的になってしまうのです。この3つのやっていることを分解して、それぞれを理解すれば、話は簡単になるのです。
それでは、その3つのことを分解して見ましょう。
①全体的に暗くする。
ヒストグラムの山が左側1/4のところくらいにくるようにトーンカーブ全体を押し下げます。実に分かりやすいですね。
②中間調のコントラストを上げる
山の左側半分のトーンカーブが動かないようにポイントを打ってください。そして、図の矢印に部分を持ち上げます。
この①と②を組み合わせたのが、S字になります。
③背景のコントラストを下げて、背景を滑らかにする
図のように、ヒストグラムの山の右側を動かさないようにポイントを打ち、山の左側を持ち上げます。
さて、以上①~③の操作の合成ですが、大事なことは①~③を一緒にやる必要はないということです。また順番もこの通りである必要はありません。
ほんとにコントラストアップと言える操作は②だと思います。ですから②の形はよく覚えておいてください。
①に関しては、画像処理の初期段階であまりにも明るいと、階調の高輝度部への割り当てが難しくなるので、わりと画像処理の最初の段階で行っておくと良いでしょう。
②の中間調のコントラストアップですが、低輝度側が固定されているので、あまりコントラストが上げられません、そのため天の川がはっきりしません。しかし、逆にこれが無理なコントラストアップのリミッターになっています。これを超えてコントラストアップしようとすると星がカリカリになってしまったりするのです。
画像全体でかけるコントラストアップはこれが限度と思い、後はマスク処理などと組み合わせて処理するか、何らかの滑らか処理を加えるなどの対策が必要です。
③の操作に関しては、階調を詰める操作であり、あまり画像処理の初期段階でやると淡い部分の情報が落ちます。なるべく画像処理の最後の段階でやるべきです。
まとめ。
トーンカーブのS字が難しいなら分けて行う。
①最初は明るさの調整、
②それから、中間調のコントラストアップ
③画像処理の最終段階で背景なめらか処理
さて、次回はマスク処理でのトーンカーブの例を示します。
| 固定リンク
コメント