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2010年9月23日 (木)

「ワンランクアップの星野写真その22」フォトコンの傾向と対策

前回、フォトコンはレベルだけで決められるわけでないので、進んで参加しようということ言いました。

では、どのような作品作りを目指せばよいのでしょうか、今日は私なりの作品のねらい目みたいな物を書いてみます。あくまでも私個人の感想です。

●見た目勝負
 やっぱり見た目勝負だと思います。新しいアイデアや新規性は、入選のハードルを下げてくれます。しかし、その新規性やアイデアが「作品」に表れていないと、まったく意味がありません。
 たとえば、ある画期的な方法を発見したとします。たとえば総撮影時間が半分になるような画期的な方法です。しかし、単に撮影時間が半分になっただけでは、何の意味もありません。それが作品に出ないかぎり、普通の作品と変わりありません。
 とにかく見た目勝負です。作品に表れない限り、データさえ見てもらえない可能性すらあります。

 同じことが、作品ずくりの労力についても言えます。撮影に10時間かかろうが、100枚モザイクしようが、最終的に出来た作品の見た目にインパクトがない限り、個人の労力はまったく意味がありません。

実例1
 私はイメージシフトによるモザイクといういわば特殊な方法、(新規性と言ってもいいかと思います)で、天体写真を始めましたが、結局これだけでは1年間入選はしなかったです。やはり、見た目ですぐ凄いと思えるような作品でないとダメなようです。

実例2
 2年前の秋、私はオリオン座の大作を撮影しに行きました。一晩かける大作です。しかし、まだオリオン座の高度が低かったため、手短にぎょしゃ座の写真を撮りました。
 結局、このぎょしゃ座の作品が最優秀に選ばれ、オリオン座の作品は入選すらしませんでした。個人の思い入れや労力なんて関係ありません。皮肉なもんです。

●シャープさより美しさ
 天体写真をやっている人はシャープさを過度に求める傾向があります。確かに重要ですが、美しさを犠牲にするほどではありません。

実例
 シャープさが重要なら、モザイク作品は入選しやすいはずです。私は、たくさんモザイクやっていますが、むしろモザイク作品の方が入選率は低いです。モザイクにかける時間があるなら一枚の露出時間を増やした方が、より美しく、よりインパクトのある作品を作りやすいです。(フルサイズにしたので、モザイクは必要なくなったという事もいえます。APS-Cなら、未だにモザイクに頼っていたかも知れません。)
(極論ですが、私は最近モザイクとコンポジットはまったく同じものではないかと思うようになりました。モザイクすると強調処理しやすくなりますので、これはコンポジットと同じ効果です。それとモザイクすると星が小さくなりますが、でも星があまりにも小さいと見た目へんです。そこである程度、星を強調して大きくしますので、結局同じことになります。空間的情報の蓄積がモザイクであり、時間的情報の蓄積がコンポジットになります。情報量が同じなら画像処理でいかようにも表現できますので、結局同じになります。)

フォトコンの傾向と対策を画角ごとにまとめて見ましょう。(私はあくまでも星野写真専門なので、星雲星団や月/惑星の写真は除外ですよ)

魚眼~超広角
 この画角は星野写真というより、星景写真と同じ扱いにされます。ですから、星野写真を意識するより星景写真として地上風景なども考えながら撮影計画を立てるといいでしょう。入選率で言うなら圧倒的に夏の天の川が良いということになります。
 高価な機材や、高度な画像処理技術もいらないので、初心者でもわりと入門しやすい画角です。
 見た目の美しさが重要ですから、光害の少ないところで、狙いたいです。
 広角レンズは収差が大きいので、十分絞って撮ります。コンポジットも数枚した方が良いです。星景写真だからと撮影の手間を省かず、真面目に取り組めば必ず入選できます。

Photo_ex1

広角
 主に天の川にそって撮影していきます。画角が広いので、定番の構図というものが既に出来上がっています。
○さそり座~いて座~わし座あたり
○夏の大三角
○はくちょう~カシオペア
○ケフェウス~ペルセウス
○ぎょしゃ~オリオン
○冬の大三角
 画角が広いので、いわゆるオリジナリティというのが出しにくいです。しかし選者も一期に一作品は載せたいみたいで、見た目綺麗であれば載せてもらえます。いっぽう、星景写真との兼ね合いもあるので、スペースがあるかどうか、わりと運に左右される画角でもあります。
 この画角は、中判銀塩写真では同じみですので、見慣れた作品になりやすいです。インパクトを与えるならデジタルらしく派手に仕上げてみるのも手です。

Photo_ex2_3   

標準
 この画角は、2通りのアプローチがあります。
その1 星座写真としての標準画角
 かつて、銀塩写真のころは、星座写真という分野が確かにありました。最近はめっきり星座写真が天文誌に載ることがなくなりました。私の経験でも星座写真で入選したのは僅か2作品のみです。一番力を入れて、一番たくさん送ったのも星座写真でしたが。。。
 まぁ、デジタルの時代には対象が地味なのかも知れません。

Photo_ex3

その2 星野写真としての標準画角
 これは星座を対象するのではなく、天の川の一部を切り取ったり、大きめの散光星雲群や、おうし座分子雲のような大きな広がりを持つものを対象するものです。
 この分野はまだまだデジタルでは撮り尽くされていません。開拓の余地がいっぱい残されています。
 ただ、他人の作品を見ていると、カメラレンズによるお気楽撮影気分が抜けきれていないのが残念であり、チャンスでもあるところです。望遠鏡の撮影と同じようにしっかりやれば、今までに見たこともない作品をたくさん作れる領域でもあります。

 この画角は、星が一番カリカリしやすい領域でもあるので、画像処理が一番難しいところです。広角は星が点のように小さく写りますので、わりとカリカリ感はなく天の川は全体的に雲のようになります。逆に、望遠や望遠鏡のような長焦点は星にある程度の大きさが出てきますので、星の周辺をやわらかくしやすいです。
 ところが、標準画角はこの中間で、一個一個の星が分離できるのですが、大きさが望遠ほど十分でないため、強調するとエッジがたって、星がカリカリしやすい、どぎつい写真になりやすいです。これを避けるには、露出時間を伸ばし、コンポジット枚数を増やすのが一番です。

 私はいつも思うのですが、なぜ広角系星野写真は、冷却CCDによる望遠鏡の作品と同じように手間暇をかけて撮れないのかと。どうも「星野写真=お気楽撮影」の呪縛から抜けきれないでいます。まぁ、だから私みたいな人がでも入選できるのですが。。。

中望遠
 現在私が最も力を入れている画角です。標準画角その2で説明したようにデジタルではまだ未開の領域です。中望遠画角の良い対象は全天にいっぱい残されています。
 ただ、この領域は「星雲星団」写真の領域とすこし被るので、望遠鏡派の人たちとの差別化が必要です。望遠画角では入りきれないような、大きな星雲、散光星雲群、分子雲などが対象になります。また天の川などを中望遠で撮ると、適度なクローズアップ感と、ワイド感が微妙にバランスしてあって、面白い領域と同時に難しい領域でもあります。

 また画像処理は、星野写真というより、本格的な「星雲星団」写真と同じようになりますので、画像処理技術も磨かなければなりません。

 またこの画角はノータッチガイドで撮影でき、それほど大きな赤道儀を必要もないので、安く、軽いシステムで天体写真を始めたい人に向いています。

Photo_ex4_2

望遠
 望遠レンズになると、完全に望遠鏡の星雲星団写真と被ります。画像処理方法も淡い星雲を美しく表現することが要求されます。星雲星団写真は、天体写真の花形です。人気の領域ですから入選も難しくなります。
 ただ望遠鏡よりもちょっと画角が広いので、それを利用して望遠鏡との差別化をすることが重要と思います。
 大きめな星雲を狙う、散光星雲群や、星雲星団をペアで収めるなど考えられます。あるいはマイナーな天体を狙うのもいいです。
 それから、天の川の見慣れた領域であっても望遠レンズでの切り取り方次第では、まったく新鮮に見えることもあります。「この領域はどこ?」と思ってもらえるような構図を見つければ、しめたものです。
 さらに、もっと差別化するなら絶対に人のやらないようなことをやってみることです。たとえばプレアデス星団をR64やHαフィルターで撮るなどです。こんなアイデアはいくらでも出てきます。 

次回はフォトコン応募の注意点です。 

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