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2014年2月23日 (日)

「理想のポタ赤を作る」ノータッチガイドの限界は

これから、ポタ赤を作るわけですけれども、ポタ赤でよく問題になるのは、ノータッチガイドで何mmの焦点距離まで撮影できる? という問題があります。

もちろん、機材の性能(とりわけピリオディックモーション)によるので一概にはいえないのですが、私個人の感想を言わせてもらいたいと思います。

私は長いこと、スカイキャンサーでノータッチガイドをしてきました。できるだけ長い焦点距離でも撮影できるようにいろいろ試してきました。(赤道儀のオーバーホールや、極軸望遠鏡の調整など) で、そういった経験を踏まえて大雑把に言わせてもらえば、ノータッチガイドの限界は、

せいぜい焦点距離150mmくらいまでで、露出時間は5分以内

大型のしっかりした赤道儀なら、もっと大丈夫でしょう。しかし、小型のポタ赤ならせいぜいこの程度というのが実感です。

ですから、よく聞く「300mmで10分露出の可能」という言葉を、とりわけメーカーサイドから聞くと、ほんとかなぁ~と思ってしまいます。

まぁ実際にできていますよと言われると、「そうですか」と答えるしかないのですが、この「可能」という言葉をもっと深く掘り下げてみる必要はあると思います。

可能とは

まず問題としたいのは成功率です。この可能というのはどのくらいの成功率でしょうか?90%? 私は成功率90%のシステムなんかとても使う気になれません。一晩で5時間撮影するとして、10%失敗するとなると30分も無駄にするわけです。貴重な遠征を30分も無駄にしたくありません。ほぼ100%でないととても使う気になれません。

可能の判断基準は?

ノータッチガイドの成功基準として、星が点像というのがあります。昔の銀塩時代ならそれでも良いでしょう。このデジタル時代でも、星が点像というだけで成功と言えるのでしょうか?星が点なら星雲はぼけてもいい?
よく、シンチレーションの影響があるから、星が数ピクセルずれても大した影響はないとか言いますが、これはほんとにそうでしょうか? ブレているのもがさらにブレるわけです。この議論は、スケアリングの問題とよく似てます。一つスケアリングの甘いところがあると他の部分はそれよりも小さいから問題にならないような、そういった議論です。

メーカサイドから「300mm10分可能」という言葉が出てくる背景には、根拠があると思います。

つまり、ピリオディックモーションがXX秒だから、可能というわけです。

しかし、10分も露出すれば、赤緯側も結構ずれてきます。

そこで条件が付きます。

「極軸をちゃんと合わせれば可能です」

しかしですね。この「ちゃんと」が難しいんですよ。そもそもその機材がそんな正確に極軸をを合わせらるような精度や構成になっているかどうかです。

私も、今まで経験してきて、ちゃんと極軸を合わせたつもりなんですが、北極星を間違えたかと思うくらいずれたことがあります。あれはなんなのでしょうかね。とにかく言うのは簡単なのですが、実際にやるのは難しいものです。

ここでまた反論が出てきます。「それは赤経回転軸と極望のレクチルの中心が合っていないからです。ちゃんと合わせればできます。」

だからそのちゃんとが難しいんですよ。その赤道儀は簡単に合わせられるような機構になっているでしょうか。

私のスカイキャンサーはレクチルの調整は3本の芋ネジでできるようになっています。しかし、これが面倒なのですよ。特にまわしすぎちゃうと、芋ネジが中に落ちちゃうんです。それで一日かけて合わせたのですが、それでも完全ではなく、ほんとはもっともっと追い込みたかったのです。

ちなみに天体写真の世界では、この「ちゃんと」という条件付がいっぱい出てきます。言葉にすると簡単なのですが、実際やるのは大変で、奥が深い。

ちゃんとピントを合わせれば
ちゃんとスケアリング調整すれば
ちゃんとガイドをすれば
ちゃんとダークを引けば
ちゃんとフラット処理すれば
ちゃんと画像処理すれば
ちゃんとカラーバランス合わせれば

だから、それが難しいんですよ。これみんなちゃんとできれば、みんなフォトコンの常連です。

だから、「ちゃんと極軸を合わせれば、300mm10分も可能」みたいな言葉をそのまま鵜呑みにするのは注意が必要というのが私の主張です。

「平均台の上をちゃんとまっすぐ走れば、落ちませんよ」

といってる様にも聞こえるのです。

さて、なんでこんな話をしたかというと、これから作る「理想のポタ赤」なんですが、スペック的なことに偏るのではなく、実際の運用を重視した、本当に使う立場になったポタ赤を作りたいということなんです。

最後に「自動導入」について少し話しを。

自動導入というのは便利そうな機能で特に初心者にはありがたいような機能に見えます。しかし、ほんとうに自動導入を使っている初心者の比率って多いのでしょうか?私にはベテランほど使用率が高いように見えます。

自動導入は簡単です。

ちゃんと、極軸をあわせて、
ちゃんと、基準星を導入して、
。。。

もし、私が初心者向けに望遠鏡を贈るとすれば、自動導入よりも、正立ファインダーと正立プリズムと低倍率広視界のアイピースをつけた望遠鏡を贈ります。

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コメント

昨今は様々なポタ赤が発売されていますが、私の中ではベストがスカイメモです。とはいえ、85㎜で5分だと成功率はほぼ100%ですが、10分となるとかなり確率が下がりますね。運が良ければ10分でも100%ですが、個人的には85㎜でも5~6分が安全圏と思っています。
どんな赤道儀になるのか、マイコンの新連載も含め、楽しみにしております。

投稿: hana | 2014年2月25日 (火) 22時29分

hanaさん、楽しみにしていただいてありがとうございます。

hanaさののようなベテランの人に満足してもらえるような赤道儀を目指したいと思います。

投稿: ほんまか | 2014年2月27日 (木) 22時06分

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