「経緯台で天体写真」ローテーターの原理
今日は経緯台追尾の肝であるローテーターについてのお話です。
ご存知のように、経緯台で星を追尾すると、写野が回転します。それをキャンセルするのがローテーターです。
ローテーターには2種類あって、像を回転させるイメージローテーターと、撮影装置全体を回転させるインスツルメントローテーターです。大きい天文台では撮影装置全体を回転させるのは大変なのでイメージローテーターが使われているようです。
民生品ではミードがフィールド・デ・ローテーターという装置を販売していたようですが、あまり精度が良くなく普及しなかったみたいです。
さて、私のローテーターは撮影装置を回転させるインスツルメントローテーターです。それに2ポートのオフアキシスガイダーをつけています。下図のように2つの星の動きでもって星を追尾します。
まず、2つの星の重心でもってガイドします。そうるとやがて写野が回転してきます。回転の中心はガイド点、つまり2星の重心です。
ここで、ローテーターの出番です。回転角検出し、ローテーターを回転させます。しかし、ここで問題が発生します。写野の回転中心と、機械的な回転中心が必ずしも一致しないことです。
写野の回転中心と、機械的な回転中心が一致しない場合は回転によって、重心が移動してしまいます。どのくらい移動するか見積もってみましょう。
そのためには、2つの星の関係を下図のように並行移動してみましょう。
角度θを挟む三角形は相似形ですから、星の移動距離と重心の移動距離(青の矢印)との比は、図でm:nになります。
この図から明らかなように、仮にm:n=10:1くらいと仮定すれば、星の移動距離はせいぜい1ピクセルですから、重心の移動距離は0.1ピクセル程度ですぐ修正信号を出せば撮影には影響しないレベルです。
ここで影響が出ないレベルというのは、常に星の動きを見てガイドしているから言えることです。0.1ピクセルでも積み重なれば大きくなります。経緯台のノータチガイドや、ミードのローテータのように計算だけで、回転を制御しようとすると、このずれが無視できなくなります。今まで経緯台の追尾が難しかったのはこのような理由が大きいと思われます。
最後にローテーターにどれだけの回転分解能が必要か見積もってみます。
フルサイズの場合、回転中心から20mmくらいの点を考えれば十分でしょう。つまり半径20mmの円周にどれだけのピクセルがあるか計算すれば、それがそのまま分解能になります。
1ピクセル5ミクロンとすれば、分解能はおよそ1/25,000になります。角度にすれば0.014度です。
これはパルスモーターで制御する場合、余裕で実現できる値です。ただ機械的な滑らかさが0.014度の精度であるかどうかはわかりません。ベアリングが必要になるかも知れません。
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