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2015年11月15日 (日)

星野写真のヒストグラム、その2

それでは、解答です。

1はあり得ないですね。1の位置はこの画像の一番暗い部分ですから、ここで分けても何も得られません。しかし、1より右側の部分なら、星の光の成分は入っていておかしくないです。しかし、今回の問題の場合は背景と星を区別できる明確な閾値がどこにあるかですから、どこか一か所決まるはずです。

それでは、実際にやってみましょう。題材はこれ。

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これをフォトショップエレメンツのレベル補正で、下側のスライダーで区切ってみます。
まずは1の位置。

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大して変わりません。次は2の位置。山の中央です。

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まだ、だいぶ背景の明るさが残っていますね。それでは、これよりちょっと右。3の位置。

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中央付近が明るいですが、これは天の川で背景でないので、かなりいいせんいってます。
次に山の右端。4の位置。

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もう星しか残ってません。次に最後5の位置。

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微光星が消えてしまいました。これはやりすぎ。

ということで、正解は3か4です。理論的な正解は3。確実に背景と区別するなら4の位置ですね。

さて、何を言いたいかというと、すでに星々想々さんやラムダさんが、解答で述べてるように、画像処理前の星野写真のヒストグラムの山は、ほとんど背景、つまりカブリを意味してるんです。

星なんてものはすべて集めても、画像全体からすると微々たるもんです。ですからヒストグラムにはほとんど現れず、だいたいが背景なのです。この山はカブリのムラを表しているといっていいでしょう。

さて、理想的な背景の場合、ヒストグラムの山の左側は完全に垂直、絶壁になっているはずです。次の画像を見てください。

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この例では、多少、傾いていますが、ほんとはもっと垂直になります。なぜか?
三段論法で証明してみましょう。

1 背景は画像の大部分を占める。したがって、背景レベルはヒストグラムの山のピークである。
2 背景は星も星雲も何もない。よって一番暗い部分だから、これより左側には何もない。
3 したがって、絶壁である。

三段論法使うともっともらしいですね。しかし、真実です。

では、なぜ、実際には山はなだらかなのでしょうか? これは主に周辺減光です。この傾きは周辺減光を意味します。つまり山の左端の部分は、画像の四隅の一番くらい部分の背景を表します。完全に背景がフラットなら垂直になります。

話をさらに進めます。

この例でわかったように、天体写真の画像なんてものは、ほとんとが背景でつまりカブリなんですよ。このまま強調処理したら、カブリを強調するようなもんです。

ただ、カブリ自体はそれほど問題ではありません。完全に一様なカブリなら、天体の光はその上に乗っているので、カブリの分を減算すれば、天体だけの光が残り、あとは好きなように強調処理すればいいのです。

問題はカブリではなく「カブリのムラ」です。もっと端的に言うと、周辺減光です。なぜならカブリのムラで一番大きなウエイトを占めるのが周辺減光だからです。

カブリのムラは大波みたいなものです。。大波の上に乗った「さざ波」が天体の光です。大波を沈めない限り天体の光はどうにも処理できません。

よく、淡い星雲がカブリに埋もれてしまうというような表現を使いますが、正確ではありません。正確には、カブリの上に乗ってるのです。カブリがあるから淡い星雲が写らないことはありません。飽和しない限り、ちゃんと上にのっかてるのです。

この下の大波をしずめないかぎり、上に乗ってる小さな波は強調できません。

良く淡い星雲の強調方法を聞かれるのですが、それの解答は背景を徹底的にフラットにすることです。

淡い星雲を強調することと、背景をフラットにすることはほぼ同義語です。

なぜなら、完全に背景をフラットにできれば、だれでも初心者でも、トーンーカーブでもレベル調整でもなんでも使って簡単に星雲を強調できます。

マスクだとか、画像処理テクニックなんてものは、最後の味付けの部分だけです。ほとんどはフラットで決まってしまいます。

逆に、完全なフラットなのに星雲がいっこうに表れないのは単に総露出時間が足りないだけで、どんなベテランが画像処理したって出てきません。

もし、あなたが画像処理で奇麗に天体を処理できなかったり、淡い星雲がなかなか出てこなくて悩んでるなら、それは背景をフラットにする技術がないためです。ただそれだけです。それは単にフラット処理だけの話ではありません。背景には様々なムラがあります。これを根気よく取りのぞく技術や忍耐力。これがすべてです。

背景をフラットにすることの重要性を分かっていただけたでしょうか。次回、暇があったら、「では実際にどうすれば良いか」説明してみたいと思います。

補足
SS-oneオートガイダーでは、星と背景を区別する閾値は以下の式で求めています。

閾値 = 輝度平均 + a×分散

統計学上はa=2なんだろうけど、たまに間違うので、経験上はa=4でうまく星を背景から分離できてます。

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