フラット補正について、理論編
前回、ヒストグラムの話で、フラット補正の話が出たので、簡単なフラット補正の話をしたいと思います。
フラット補正は重要なのですが、何が何でも厳密な手順に従ったちゃんとしたフラット補正をしなければならないということではありません。どれくらい厳密にしなければいけないかは、もともとの周辺減光の大きさと、どれだけ画像を強調したいのかにかかっています。
大雑把にいえば、3段階にレベル分けできると思います。
1 そもそも周辺減光を少なくする
2 ツールによるフラット補正
3 フラットフレームによるフラット補正
この中から自分に合ったものを選べばよいと思います。一番いけない事は何もしないことです。
1の周辺減光を減らすにはいくつかの方法があります。
カメラレンズなら絞る。
望遠鏡の場合は周辺光量の多い光学系を選ぶ。
周辺減光が増えるレデューサーの使用を避ける。
センサーサイズの小さなカメラにする。
などがあります。
2のツールによるフラット補正は、たとえばステライメージの「周辺減光/カブリ補正」がお薦めです。
周辺減光が少ない場合はこれでなんとかなる場合がほとんどです。
これでも無理なら、いよいよフラットフレーム撮影によるフラット補正をしなければなりません。ただ厳密にやろうとすると面倒なことも多いので、私は、フラットを現像後に行う簡易フラット補正の方法を説明したいと思います。
その前に、フラットフレーム撮影による、フラット補正の原理を簡単に説明します、次回、実践編を紹介します。
天体写真をパシャっと撮ると、「天体の光+背景」F(x)に周辺減光関数α(x)をかけたものがセンサーから出力されます。これを表現した図です。
x軸はセンサーの横軸です。周辺減光関数は最大値が1です。周辺だと0.6とかになります。
次にフラット光源という一様な強さAの光を撮影すると、やはり周辺減光関数α(x)が乗算されて、Aα(x)という値がセンサーから出力されます。
したがって、天体の写真(α(x)F(x))をフラットフレーム(Aα(x))で割り算し、Aを掛けてやれば、周辺減光に依存しない生の天体画像F(x)が得られます。
ところがですね。天体の光に対して、センサーがそのままの値を比例関係に基づいて、出力してくれれば良いのですが、実際はそうではありません。たとえば、オフセットという概念があります。センサーの入力信号に対して、ノイズと区別しやすいように、オフセットと呼ばれる固定値を加算して出力する場合があります。この値をBとします。
そすると、上図のように正しくフラット補正できません。
CMOSカメラの場合は、このオフセットの値は分かるので事前に引くことができますが、デジカメだと分かりません。しかしデジカメの場合、ダーク減算で同様の効果が得られます。
(ダーク減算 α(x)F(x)+B - B = α(x)F(x)、 Aα(x)+B - B = Aα(x))
したがって、正しいフラット補正をするためには、ダーク減算も同時に、現像前にする必要があります。(フラットフレームの方もダーク減算する)
また上の式で、重要なのは結果はAの値には依存しないので、フラットフレームの明るさはさほど重要ではありません。また3色で異なっていてもかまいません。しかし、デジカメの場合は内部でどのような処理をしているか分からず、必ずしも理論どうりに行かない場合もあります。
実際問題、Bの値は非常に小さく、周辺減光自体がそれほど大きくなければ、無視してかまわない場合があります。その場合、ダーク減算しない現像後のフラット補正も可です。次回その方法を説明します。
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