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2019年2月24日 (日)

SS-oneトラベラー開発の歴史

SS-oneトラベラーの発送、すべて完了しました。
やっと肩の荷が下りた感じです。いままでトラベラーの作業が占める割合が多かったので何も出来ない状態でしたが、これからはもう少し余裕が出来そうです。

今日は、トラベラー計画完遂記念として、トラベラーの開発の歴史を振り返ってみたいと思います。

構想
FSQ85EDやBORG90FLなど中型屈折鏡筒が楽に載せられ、構造を思いきって簡略化し、ほんとうに電車で持ち運べる新しい概念の赤道儀を作りたいというのが最初でした。
名称は、「ポタ赤」でも良かったのですが、最近は「ポタ赤」というと、ポラリエみたいなものを想像するので、「トラベル赤道儀」という名称にし、製品名を「SS-oneトラベラー」とすることにしました。

第一試作機

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そこで、最初に作ったのがこれ。第一減速機に採用したのが、なんとタイミングベルト。このアイデアはあっけなく撃沈でした。
以前、ハーモニックドライブ赤道儀のところで説明したように、ウオームギア以外の減速機は、回転力が双方向に伝播するので、中間ギアのガタがそのまま赤経軸に出てしまいまいました。もうガタガタでした。特に、この試作機の場合、中間ギアにウオームを採用しているので、モーターの軸方向のガタまで赤経軸のガタに影響してしまいました。

これ以降、第一減速機はウオームホイル・ギアということにしました。

基本構造

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トラベラーの赤緯軸が前に飛び出し、赤緯回転面の極軸に対する重心が低いという特徴がこの時点でほぼ決まりました。

一見、ユニークな構造のようですが、ドイツ式赤道儀の欠点を克服しようとすると自然とこの形になります。確か、HUQさんも同じような事を言っていました。
それができないのは、強度の問題とか、極望の問題とか、いろいろ制約があるためで、このような制約が緩和されれば、合理的な形と思います。
事実、天文台などの据え置きの赤道儀とか、CRUXシリーズも結局は、この2つの特徴を有しています。

第2試作機

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基本構造を元に、その有効性を確認するために作ったのがこの第2試作機。

第3試作機
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さらに、実際に使うことを目的に作ったのが、この試作機。

胎内星まつりに展示

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ここではじめて、みなさんにお披露目。けっこう評判が良かったので、本格的に作ることを決意しました。

それで最初に作ったのが特注ウオームホイル

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2枚だけだと、流石に高価で、6万6千円でした。

第4試作機

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特注ウオームを元に作ったのがこの試作機。ほぼ完成型と言っていい。

挫折と復活
ところが、ここへきて、量産化を断念しないといけないことになってきました。金属加工業者と折衝を続けてきましたが、普通に頼むと、とても現実的な値段にならないことが分かりました。

そこで、量産化はあきらめ、私の手作りの試作機レベルで良いなら、という条件で募集しました。

私は、1人でも居れば作ろうと思いました。多くても4~5人と思っていましたが、なんと10名もの方が応募してくれました。やる気が戻ってきました。

ハーモニックドライブ化
もうひとつ転機がありました。ここ最近話題のハーモニックドライブです。

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ハーモニックドライブなら、ウオームを特注する必要はないし、構造も簡単だから、作るのは楽だと思いました。

ただ、ハーモニックドライブは非常に高価なので、SS-oneトラベラーの定価はもう決まっていたので、ハーモニックドライブにすれば、利益は0どころか赤字になるだろうと。

応募した10名の方にアンケートをとったところ、ウオームがいい、という人はおらず、ハーモニックドライブでいくことにしました。

ハーモニックドライブで苦戦
ところが実際にやってみると大変。ハーモニックドライブが悪いのではなく、中間ギアなしのダイレクトドライブのため角分解能の粗さがたたって、ガイドがまったく安定しません。

そこでいろいろ工夫しました。最初にやったのはガイドアルゴリズムの改善。SS-oneはモーターを直接パルスで制御しているので、この効果は非常に大きく、かなり安定しました。しかし、まだ突発的にガイドが乱れることがあり、苦戦。

この突発的な乱れが、モーター線のノイズが原因と分かりました。そこで行ったのが、
1 モーターにかける電圧を高くする
2 RAとDECで、モーター線を分ける
3 モーター線を短くする

これで突発的な乱れもなくなり、ほぼ問題ないレベルまでにできました。

CNCフライス盤の導入
そして、もうひとつ大きな転機がありました。CNCフライス盤の導入です。

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CNCフライス盤の導入で、このような立体的な部品が作れるようになり、部品点数の削減、強度アップにもつながりました。

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ところが、そのCNCフライス盤が思うように動いてくれません。

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結局、ノイズフィルターを挿入したり、モーターを交換したりして、やっとまともに加工できるようになりました。

最終試作機完成

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すったもんだでやっと完成しました。

CNCフライスのおかげで複雑な設計もできるようになり、将来のラズベリーパイ内蔵も考慮しました。

胎内星まつりにも2回目の展示。

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とにかくトラベラーを最初に持った時の感想はみな同じ。「軽い」

もともとトラべラーは4Kg以内が目標でしたが、ハーモニックドライブの採用でさらに軽くなり、最終的には3Kちょっとでした。

ついに完成

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ということでやっと完成したSS-oneトラベラーです。

改めまして、みなさんありがとうございました。

今後ですが、まずはコントローラ内蔵化です。

コントローラ内蔵でなくても良いからほしいという人もいますが、「SS-one AutoGuider Pro」の在庫もないし、コントローラを内蔵した方が、ガイド性能は良いのは確実です。ですから、コントローラ内蔵化の後に、一般販売を考えています。

価格は流石に上げざるを得ません。コントローラ、オートガイダー内蔵で、30万円を考えています。高いは高いのですが、他のハーモニックドライブ赤道儀に比べれば、かなりお安いのはないでしょうか。とにかく早くやるようにします。

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コメント

長年の開発の背景を読ませていただき頭が下がる思いです。是非一般販売の際には購入したいのですが、可能ならAutoGuideProの下取りも検討いただければと、勝手な事を思い巡らせています。楽しみにしています。oniku

投稿: | 2019年3月12日 (火) 06時30分

ありがとうございます。

今回は、下取りを考えていません。
しかし、
SS-one AutoGuider Proを他の赤道儀用に変更する対応や、
SS-oneトラベラーをコントローラ内蔵ではなくProで動作するように対応し、その分、価格を安くすることも考えています。

投稿: ほんまか | 2019年3月12日 (火) 16時09分

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