撮影機材

2020年4月 5日 (日)

EQ5GOTO赤道儀の修理依頼。

EQ5GOTO赤道儀+SS-one AutoGuider Proのセット。
ユーザさんから、突然自動導入が大きくずれるようになったという相談がありました。

ということで、自動導入がずれる場合の下記のようなお決まりの注意点を伝えましたが、
1 極軸を大きくずれている
2 DEC/REVの設定を間違っている
3 基準星を間違っている
4 Syncを忘れた

しかし、上記のことを注意しても症状が変わらないとのこと。
ということで赤道儀を送ってもらうことにしました。

さっそく実際の星でテストしてみると、確かにずれる。

基準星から近いところでは少しずれて、遠いところでは大きくずれる。
どうやらDEC側が行き過ぎているよう。
基準星から、対象に導入、さらに基準星にGOTOで戻すとぴったり戻る。

ずれてはいるようだが、そのズレ方がやたら正確で、再現性も100%

たとえば、ギアのネジが緩んで空回りとかだと、こんな正確にはずれないでもっとランダムなはず。
まるで、突然ギア比が変わったような不可思議な現象。

ということでコントローラ側の設定を疑ったが、設定は問題なし。
赤道儀のギア比が途中で変わってしまうことなんてあるのだろうか。

そう思いモーターカバーを外してみたら、原因が一発で分かりました。

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たぶん、モーターをぶつけたかなんかしたんでしょうね。
ギアのかみ合わせが外れ、本来内側の小さなギアにかみ合っているはずが、外側の大きなギアと、ほんの少しのところで、ぎりぎりかみ合っています。
このぎりぎりが不運でした。
完全に外れていれば、DEC側は動かないので、赤道儀の異変にすぐ気付いたはず。ユーザさんも苦労せずに済んだと思います。
最近はモーター内蔵や、ギアカバーが当たり前になってますが、SS-one Miniの時も、ギアカバーがないことを嫌がる人が多いのですが、
私は、逆にギアが見えた方が安心します。何か、動いているのが目にいえるじゃないですか。昔の赤道儀はみなギアが見えた。
最近の赤道儀システムは、赤道儀、コントローラ、ソフト、様々なメーカのものや、フリーウェアなど組み合わせて、構築されていることが多いですが、
問題があった場合、ある程度、ユーザ側で問題個所を特定してからショップなどに問い合わせないと、相手にされないというか、ショップ側だって、分からないんですよ。ギアに限らずブラックボックス化が進んで。
その点、SS-oneの場合は、ハード、ソフトの区別なく私が全部やってますので、ユーザ側である程度特定する必要はありません。(もちろん特定してもらった方が嬉しいですが)その点は、SS-oneの利点です。
そんな理由で、実は私は、あまり「CMOS Capture」やりたくないんですよね。ZWOのドライバの問題になると、まったく中身が見えず、お手上げ状態。ユーザさんと変わりありません。原因追究は不可能で、ひたすら動く方法を探すしかない。
まぁ、それでもCMOS Captureのご要望は非常に多いので、そろそろ生産しないといけないのですが。

 

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2020年2月 6日 (木)

オートガイドカメラ出荷遅れについて

中国の新型肺炎の影響で、春節休暇が2月18日まで延びたという連絡がきました。

この影響で、現在オートガイドカメラの出荷ができないでいます。おそらく2月終わりから、3月初めころになると思われます。

大変、申し訳ございません。

電子極望の在庫残り僅かで、なくなったら、やはりオートガイドカメラと同じになります。

。。。

一体型電子極望ポーラー3も、3月中ということでしたが、やはり部品の入手ができず、4月にずれ込む見込みです。

。。。

SS-one製品はほとんどの部品を中国から買っています。
日本で買うと、よく「桁が違う」といういい方をしますが、桁も一桁どころか2桁、3桁違うものもあります。なんで日本はこんなに部品が高いのでしょうか。
というかそもそも日本では部品が手に入りません。

その一方、完成された製品になると、日本は特に高いこともなく、中国と同じレベルです。
日本だけでやってると、高い部品を買って安く売らないといけない。

。。。

ビクセンSXW赤道儀のSS-one改造をしました。

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ビクセンのこのクラスの赤道儀はいつも思うが、ギアが良く調整されていて感心します。調整機構もやりやすく、EM10やEM200のあの大雑把な調整機構と比べて、ほんとやりやすいです。この個体の場合はその必要もなくしませんでしたが。
(通常、パルスモーターの自動導入改造するとギアのかみ合わせを再調整しないと、高速で回らない)
ビクセンのこのクラスの赤道儀はもっと評価されていいと思うのですが、いまいちなのは、DCモーターのせい?

 

 

 

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2019年4月 6日 (土)

「SS-oneオールインワンガイダー」販売開始!

~~売り切れました。すみません~~

お待たせしました。
SS-oneオールイワンガイダー、販売開始しました。

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詳しい使い方は動画で。

 

 

 

 

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2019年4月 4日 (木)

EvoStar72ED+専用レデューサーの実力

以前、紹介したSkyWatcherのEvoStar72ED。
専用レデューサーが出来たみたいなので、試してみました。

専用と言っても、80EDのレデューサーの流用みたいで、ドローチューブ接続のネジ径が違うので、そこだけアダプターで変換したようです。

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写真の位置で無限遠で、バックフォーカスの余裕は数mmしかありません。
シュミットさんも言っているように、カメラ回転装置を入れる余裕はなく、48mm径のカメラマウントの芋ネジ3本を緩めて回転させます。

ただ、フィールドで縦横の構図を切り替えたい場合もあるので、この作業はけっこう面倒かも。鏡筒バンドを緩めて、鏡筒ごと回転させる方法もありますが、合焦ノブや、ファインダーが赤道儀のプレートに当たったりしますので事前のシミュレーションはしっかりしておきたいところです。

さて、きになる性能ですが、実写して確かめるため、本栖湖へアンタレス付近を撮影に行ってきました。今が旬の対象ですね。
イメージサークルを確かめるため、フルサイズのEOS 6Dでの撮影です。

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EvoStar72ED+専用×0.85レデューサー(357mmF4.96)
EOS 6D ISO1600 4分×22枚 トータル88分
SS-oneトラベラー + SS-one AutoGuider Pro + 120mmガイドカメラ

明るさの最小値など、星を小さくする処理やシャープ系のフィルター処理など一切していません。
性能は値段とか考えると素晴らしいですね。フルサイズは対応しているようです。
中心は多少赤にじみがみられますが、シャープです。
周辺部は、多少星が肥大化していますが、等倍でみないと分からないレベルで星の形の崩れもないようです。

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次に、周辺減光の様子を見るため、生の画像を掲載します。
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周辺減光はまぁ、普通。多くもなく少なくもなく。だいたい周辺の光量は中心の60%くらいです。フルサイズなら、フラット補正は必須でしょう。
最近は、シュミレーションで光学設計をやるようで、安い鏡筒でもそれなりの性能は維持しているようです。いい時代になったものです。カメラの回転など、使いずらい面もありますが、低価格でコンパクトで軽いので、星雲を気軽に撮れる一本として、なかなかお薦めです。
(レデューサを使わないサンプルは以前出しました。興味ある人は探してみて)

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2019年3月31日 (日)

「オールイワンガイダー」、「合わせ~る」販売間近!

大人気のSS-oneオールイワンガイダーですが、すでに完成しております。実際の星でのピント合わせと調整を行った後、出荷になります。
今回は10台できました。

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「モバイル電源合わせ~る」も、もうじき完成です。デジカメがモバイルバッテリーで動作可能です。

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お見逃しのないように。

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2019年3月 5日 (火)

120mmガイドカメラセットがさらに安くなりました。

120mmガイドカメラのセットですが、ガイド鏡を他社のものに変えました。
これにより、従来より5,000円お安くすることができました。

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ガイドポート付きが、税別30,000円、ご購入はこちらから
http://shop.ss-one.net/?pid=133684813

ガイドポートなし(SS-one AutoGuider Pro専用)が、税別27,000円、ご購入はこちら
http://shop.ss-one.net/?pid=133684942

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2019年2月24日 (日)

「TOAST PRO2」にガイドポート増設

いろいろ頼まれると断るのが苦手なほんまか。
TOAST PRO2にガイドポートの増設を頼まれました。

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TP2の速度制御のロータリースイッチ出力がエンコードされているので、単純なON/OFFでは切り替えできないため、中に小さなマイコンを入れました。

ガイドポートは横に出しました。

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TP2にSS-oneオールインワンガイダーを使いたいそうです。それでこのご依頼。確かに、オールインワンガイダーみたいなのがあれば、ポタ赤でもオートガイドしたくなりますよね。


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2019年1月14日 (月)

SS-one CMOS Capture販売見込み

2月中旬には販売できそうです。

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2018年12月27日 (木)

赤道儀とモーターの話、その2

年末特別企画、赤道儀とモーターのお話。前回は、安くてコンパクトな「マイクロステップ駆動」が自動導入を身近にし、赤道儀のバックラッシュを減らしたという話をしました。

第2回目は、これまた最近よく聞く「ハーモニックドライブ赤道儀」について、その仕組みと特性を説明していきたいと思います。

まず、そもそも「ハーモニックドライブ」とは何ぞや。ということですが、簡単に言ってしまえば、「減速ギア」です。非常に特殊な構造のギアですが、減速機であることに変わりありません。モーターと一体になったものを「ハーモニックドライブ」ということもありますが、けしてモーターのことではありません。減速機のことです。

ハーモニックドライブは、ハーモニックドライブシステムズ社の登録商標です。名称は違いますが、他の企業からも同様の構造の減速機が出ているので、けして独占事業ではありません。ただ、特許料の関係でしょうか?非常に高価です。

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その特徴は
1 大きな減速比が得られる
2 バックラッシュやあそびが非常に小さい
3 大きなトルク容量がある
4 構造が簡単で小型、軽量

これを赤道儀に使った場合、上記メリットがそのまま赤道儀のメリットになります。

1 バックラッシュが小さい。->反応が早い(ガイド性能の向上)
2 大きなトルク -> ウエイトが要らないあるいは軽くできる
3 赤道儀が小型、軽量になる

ただ、ハーモニックドライブをどのように赤道儀に取り入れるかによって、特性や上記利点が異なってきます。私の知る限り、ハーモニックドライブを使った赤道儀は3種類くらいの方式があります。それぞれについて見ていきましょう。

1 従来拡張タイプ

1812272_3この方式は、従来のウォーム式赤道儀において、バックラッシュの大きい減速機内蔵モーターを、ハーモニックドライブ内蔵のモーターに置き換えたものです。

実は私が以前使っていたスカイキャンサー赤道儀の赤緯部にこの方式を採用していました。効果は絶大で、普通のギア内蔵モーターに比べて反応が早くなりました。

ただ、既にある赤道儀の拡張としては良いと思うのですが、新たに設計する赤道儀としてはこの方法はあまりメリットがないように思えます。
というのは、前回お話ししたように、マイクロステップ駆動の普及により、ギア内蔵のモーターを使うこと自体が少なくなり、中間ギアにベルトドライブを採用することも増え、バックラッシュ自体が減っているのです。
従来のウォームにかかるコストを残したまま、さらに高価なハーモニックのコストが上乗せされるのは、あまりにもコストパフォーマンスが悪いです。

2 ダイレクトドライブ型

1812273この方式は、従来のウォームの代わりに、ハーモニックドライブを採用し、さらにそれを中間ギアなしでモーターで直接駆動する方式です。ハーモニックドライブとモーターが一体になったものを使えば非常に赤道儀を小型軽量化することができます。

この方式を採用した赤道儀にはCRUX-Miniと、その構成をまねたSS-oneトラベラーがあります。CRUXシリーズの他の赤道儀では、赤緯部だけがこの構造と思われます。

「ハーモニックドライブを使った赤道儀だからバックラッシュがゼロ」という理屈が通るのは、この方式だけです。

確かにバックラッシュがほとんどのないのは利点です。ただ、いくつか問題があります。
一番の問題は角分解能の粗さです。
仮にマイクロステップ駆動ではない場合で、角分解能を計算すると、ハーモニックの減速比を1/100とすると。

360度×60分×60秒 / 100 / 200ステップ = 64秒

ピリオディックモーションが10秒以下なら優秀とか、20秒以上ならどうとか言っているのに、64秒の最小回転単位は異常です。オートガイドなんて到底できません。それを可能にしているのがマイクロステップ駆動です。仮に1/128のマイクロステップを誤差なしで制御できたとしたら、角分解能は64/128=0.5秒になります。これくらいなら、まぁまぁ実用になるでしょう。

ただ、アナログ的な信号のマイクロステップを誤差なしで制御するのは非常に難しいです。このブログのSS-oneトラベラーの記事を読んでる方はもう知ってると思いますが、私も非常に苦労しました。

この方式の場合、マイクロステップ駆動の電気的安定性がすべてと言って過言ではありません。

もうひとつ欠点というか、ウエイトレスの効果があまりありません。いくら大きなトルク容量があるからといって、鏡筒の重さをこのハーモニックドライブだけのトルクで受け止めるのは無理があり、SS-oneトラベラーなんかでもウエイトレスでなんとかなるのは精々2~3kgす。CRUX-Miniもウエイトレスの運用は3kと言っています。

3 中間ギア挿入型

18122742のダイレクトドライブ方式の角分解能の粗さを克服するために、間に中間減速ギアを入れたものです。中間ギアとモーターが一体型の場合もあります。CRUXシリーズの赤経部がこの方式と思われます。

この方式の場合、角分解能の粗さは完全に解消され、トルクも分散されるので、ウエイトレスの範囲も広がります。

ただ、中間ギアでバックラッシュが発生するので、ハーモニックドライブ赤道儀のバックラッシュゼロの利点が弱まってしまいます。

さらに、この方式の場合、ウオームギアにはない新たな問題が発生します。ガタの問題です。

ギアには多少なりとも遊びがあり、それがバックラッシュやガタの原因になります。ただ、ウオームギアの場合は、バックラッシュは問題になりますが、ガタは問題になりません。なぜなら、次のような理由です。

ウオームギアを回すと、ウオームホイルが回転します。

1812275しかし、ウオームホイルを回そうとしても、ウオームホイルもギアも回りません。
1812276つまり、ウオームギア/ホイルの場合、回転力が逆方向に伝わりません。この性質のおかで中間ギアのガタは、ウオームホイルまで伝播しません。どんな安物の中間ギアを使おうが、ウオーム自身の精度が優れていれば、それで良いのです。

ところが、ハーモニックドライブの場合はこの性質がないため、中間ギアのガタが赤道儀の回転部にそっくり伝播します。これは赤道儀を設計する立場からすると深刻な問題です。

バックラッシュの問題もガタの問題もこの方式の場合、中間ギアの精度がすべてになります。一番いいのは、中間ギアにもハーモニックを使うことです。ただコストが気になります。

中間ギアの減速比を高くするのも保持トルクが強くなるのでガタ減少の効果があるかもしれませんが、逆にバックラッシュが大きくなったり、トータル減速比が大きくなるので、導入速度が出なくなります。いずれにせよ設計するとなると非常に悩ましい問題です。

ただ、赤径部だけなら、バックラッシュもガタも実用上はあまり問題にならないこともあります。赤径の場合は、バックラッシュなど不感時間があったとしても星の方が勝手に動いていくので、オートガイド上はあまり問題になりません。

しかし、それを言ってしまったら、ウオームでも同じことで、なぜわざわざ高価なハーモニックを使うのかという話になってきます。

それに対するさらに反論として、同じと言っても、ウオームよりはいいだろうし、ウエイトレスの利点もある。。。 じゃ、それだけでこの価格差は許容できるのか、最後は価値観の判断になってきてしまうと思います。

私もこの方式の赤道儀はまだ作ってないので、なんとも言えません。今度作るときは、この方式でやってみたいとは思ってます。

-----------まとめ-------------

このように一口に「ハーモニックドライブ赤道儀」と言っても、いろんな方式があり、単に「ハーモニック」という言葉がつくだけでどうこう論じられないところがあります。

私が思うに、ハーモニックドライブ赤道儀の最大の利点は、小型、軽量にあると思います。また赤道儀の設計の自由度が高く、いろいろなものを内蔵できる余裕もあります。ですから、まったく新しい概念の赤道儀が出てくる可能性も秘めていると思います。

その構造が簡単で生産しやすいことから、今後もハーモニックドライブを使った赤道儀が出てくることが予想されますが、単に「ハーモニック」という言葉だけに踊らされないで、しっかりその特性や価格に対する性能の納得度を見極めていく必要はあると思います。

おしまい。大掃除はじめます。

 

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2018年12月25日 (火)

赤道儀とモーターの話、その1

年末です。

今年も粛々と年を終わろうとしてます。このブログも、すっかり業務報告ブログになってしまうのもさみしいので、年末ぐらい、少し役立つ情報を提供していけたらと思います。

そこで、CANP'17の講演の内容で、ぜひ聞きたいという話に、モーターの話がありましたので、ここで赤道儀とモーターの関係についてお話ししたいと思います。

2回に分けて、赤道儀とモーターの関係をお話ししたいと思います。一回目は、最近よく聞く「マイクロステップ駆動」のお話。マイクロステップ駆動が普及したおかげで、ユーザ側には二つの恩恵があったと思います。

1 自動導入が身近になった。(最近はSkyWatcherにみるように、エントリー機でも自動導入が普通になりました。)
2 赤道儀のバックラッシュが減った。

これがどうマイクロステップと関係するのか、説明したいと思います。

2回目は、1回目の話を元に、これも最近よく聞く「ハーモニックドライブ」の話です。ハーモニックドライブを使った赤道儀と言っても、私の知る限る3種類くらいのタイプがあると思います。それぞれ異なる特性があるのですが、ハーモニックドライブを使った赤道儀というだけで、バックラッシュゼロとか、あまり良く理解されていないところもあるので、このへんの説明をしたいと思います。

それでは、マイクロステップ駆動のお話しです。赤道儀というのは、下図のようにモーターの回転を、中間ギアで減速し、さらにウオームギアで減速する減速機構と見ることができます。

1812251中間ギアはモーターに内蔵されることもあります。また最近は中間ギアにバックラッシュの少ないタイミングベルトを使うこともあります。

話は少しそれますが、赤道儀で問題となるバックラッシュのほとんどはこの「中間ギア」で発生します。モーター自身はパルスモーターの場合、バックラッシュはありません。ウオームギアは良く調整されたギアの場合、ほとんどバックラッシュはありません。ただ、編芯とかあると緩いとこときついところとムラができ大きなバックラッシュが発生する場合があります。
10万円以下の安価な赤道儀と、30万クラスの赤道儀では、けっこうこの差が大きいです。高い赤道儀には高いなりの理由があるんですね。私もSS-one化改造でいろんな赤道儀を手にするようになってその差を実感するようになりました。

中間ギアの最悪は、モーター内蔵型です。黒いハイブリッド型ギア内蔵モーターの場合はまだしも、安い丸い形のPM型の内蔵ギアは特にバックラッシュが大きいです。

さて、赤道儀を減速機構とみる場合、中間ギアの減速比とウオームギアの減速比をかけ合わせたものは、トータル減速比となります。

トータル減速比をいくつにするか、赤道儀設計では実に悩ましいです。SS-oneの場合、800~1500くらいにしてます。SkyWatcherの場合、EQ3からEQ6Rまで赤道儀の大小を問わず、700ちょっとくらいです。モーターコントローラとの相性もあるので、絶対的にこの値が良いとは言えません。

そこで、この値をいくつにするか、理論的に考えてみます。まずは、「角分解能」という観点から。「角分解能」とは、モーターに1パルス送ると何度回転するかという最小角度です。

最小角度を何秒に設定するか、これも悩ましいですが、仮に大甘の設定で0.5秒としましょう。ハイブリッドタイプのパルスモーターの場合、200パルスで1回転ですから、トータル減速比は、

360度×60分×60秒÷200パルス÷0.5=12960

となります。ウオームホイルの歯数を144とすると、中間ギアの減速比90になります。

次にこのトータル減速比12960を自動導入の導入速度(恒星時の何倍か)の観点から考えてみます。早く言えば、何倍でるかです。

以下のモーターの回転数の特性表を見てください。

1812253
これを見ると、パルスモーターの場合、せいぜい10,000ppsくらいしか回らないことがわかります。実際には良くて4,000ppsくらいです。ハイブリッド型の場合、200パルスで1回転ですから、1秒に良くて20回転です。

これをトータル減速比12960にあてはめ、対恒星時で速度を出すと、

(24時間×60分×60秒)/12960×20回転=133倍

ということになります。最小角度を大甘の設定で、モーターの回転数を最良で考えてもこれだけしか導入速度が出ないのです。

角分解能を高くしようと思えば、トタール減速比は大きくしたい。一方、導入速度を早くしようと思えば、トータル減速比は小さくするしかない。つまり、角分解能と、導入速度はトレードオフの関係にあるわけです。

以前は、このことがあるので、パルスモーターは自動導入赤道儀には不向きでした。DCモーターかあるいは、非常に高価な赤道儀に限られていました。

この矛盾を解決するのがマイクロステップ駆動です。マイクロステップ駆動自体は太古の昔からありましたが、値段は高いは、かさばるし、電圧は高いし、あまり普及していませんでした。ところが最近は、すべてがワンチップ化され発熱も少なく、電圧も低くて、値段も安くなってきました。これで一気に普及しました。

マイクロステップ駆動とは以下のようなものです。

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普通は、パルスモーターはその名の通り、0か1のパルスを送るのですが、そうではなく、階段状のサイン波を送ります。従来は単純な0か1でしたが、マイクロステップの場合はその中間があるので、モーターの動きをさらに細かく刻むことができます。これはちょっとアナログ的な考えです。

このさらに細かく刻む分解能は数十から数百で、SS-one AutoGuider Proの場合、1/128です。

これは、最小角度の計算で、200としていたところを200×128にできるのです。つまり、トータル減速比はそんな大きな値にする必要がなくなったのです。仮ににトータル減速比を1/10にしても、まだ最小角度は1/12.8より小さくなります。マイクロステップのアナログ的なばらつきを考慮しても十分な精度です。

ということで、マイクロステップ駆動の普及により、めでたく、パルスモーターでも精度と導入速度の両立ができたわけです。ひいては、安価な赤道儀でも自動導入の恩恵にあずかることができるようになったのです。

。。。

トータル減速比を小さくできるということは、中間ギアの減速比を小さくできる、つまりバックラッシュの大きい、ギア内蔵型のモーターを使う必要がなくなったわけです。さらに中間ギアにベルトドライブを採用することも可能になり、赤道儀のバックラッシュは昔に比べて大幅に減りました。これもマイクロステップ駆動のおかげです。

今日はここまで。

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