天文屋のための電子工作

2013年6月18日 (火)

「スカイキャンサーオートガイド化計画」ぴったりの長さのヒーターを作りたい

FS-60CBとガイド鏡筒のヒーターを作成しようとしているのですが、鏡筒外径に合わせてぴったりの長さのヒーターにしたいと思っています。

以前このブログで紹介したヒーターの作り方だと問題があります。

というのは、ニクロム線の長さで発熱量が決まってしまいますので、自由に長さを変えれません。特に、ガイド鏡筒用だと短くしないといけないのですが、短くすると抵抗が減り、電流が増えて発熱量が増えてしまいます。つまり、この方法だと、短い長さは作りにくいのです。
それともう一つ問題があります。ニクロム線がらせん状に巻いてあるので、鏡筒との接触が少なく、効率が悪いのです。消費電流を減らすには、ニクロム線を完全に伸ばす必要があります。

さて、いろいろ調べていたら、テープヒーターとか、リボンヒーターというのがあるのを知りました。ただ工業用のため、短い単位では買えず、お値段もけっこうします。で、構造はいたって簡単でニクロム線を使っていることには変わりないので、テープヒーターを作ることにしました。

さっそく、ホームセンターで部品を調達してきました。

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●ニクロム線ですが、どれだけの抵抗のものが良いか分からないので、とりあえず、100W、200W、300W、600W全部買ってきました。それ以外では、
●マジックタイ(幅19mm)
●マジックタイ(結束バンド用)結局使いませんでした。
●絶縁テープ 結局使いませんでした。
●耐熱両面テープ(幅19mm 180℃までOK)

結局使わない物も多く無駄な買い物でしたが、それでも全部で2000円ほどで、買うよりはるかに安上がりです。次回から1000円以下で出来そうです。

それでは、作り方の紹介です。

まず、マジックタイを鏡筒外周より少し長く切り、そこへ鏡筒外周よりちょっと短く切った耐熱両面テープを裏側に貼ります。

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次に、ニクロム線を伸ばします。太いニクロム線だと完全にまっすぐ伸ばせませんので、細めのを使います。どのくらいの長さに切るかは良く考えないといけません。いろいろ試行錯誤した結果、20Ωくらいがヒーターとして適当な発熱量と分かりました。(ただし、ヒーターコントローラで半分くらいの電力にすることが前提です。コントローラがない場合はもっと抵抗を大きくします)

以前の方法で作ったヒーターのΩ数が確か、6Ωでしたから、かなりの消費電力の削減です。やはりニクロム線は延ばして使うのが効率がいいです。

さて、4種類あるニクロム線のうち、2番目に細い200Wのタイプを1.5mに切ると20Ωになるので、そのようにきります。

さて、長さ25cmくらいのヒーターに長さ1.5mのニクロム線を貼り付けるのですから、次のようになりますね。

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6往復しているのが分かると思います。ショートさせないように気をつけます。

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ニクロム線を貼り付けたら、その上にさらに耐熱両面テープを貼り、サンドイッチします。
あとは、ニクロム線にコードをつけて完成です。

さっそく、鏡筒につけて見ます。

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ぴったりの長さのなので、すっきりです。

消費電流ですが、MAX650mAですが、ヒーターコントローラで300~500mAくらいで使うつもりです。

続いて、ガイド鏡筒(ペンシルボーグの予定)用の短いバージョンを作ります。ニクロム線は一番細い100Wのものを使いました。(ちなみに抵抗値は27Ωです)

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短いので、ニクロム線をジクザクに貼り付けていきます。

とりあえあず、ファインダーに巻いてみました。やはり、ぴったり。ぴったりサイズはいいですね。

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このヒーターを作る点でいくつか注意があります。

ニクロム線を伸ばす時は、コブを絶対に作らないで下さい。コブがあるとそこで異常に発熱し、焼き切れます。(実際そうなった)

ニクロム線は細いのですが、細いということは熱が集中しているということですから、必ず厚みのある耐熱テープでサンドイッチしてください。厚みのあるテープで熱を分散させているためです。薄いテープだと鏡筒を焦げさせてしまう恐れがあります。(ちなみに私は厚さ0.8mのを使いました。)

さて、電気関係のものが一通り出来たので、すべて接続して、テストしてみました。

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快調です。あとは、オートガイダーだけです。

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消費電流ですが、ヒーターON、モーター恒星時追尾、バルブ撮影時で、1.68Aです。パソコンの消費電流が350mA程度ですので、撮影時トータル2Aちょっとということになります。40AHのバッテリーなら20時間いける計算です。

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2010年11月15日 (月)

「めざせ10万円で入選」ヒーターの製作

ヒーターを製作すべく、ホームセンターで材料を買ってきました。

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買ったのは

ニクロム線 175
マジックタイ 298
熱収縮チューブ 298
コード 200
DCプラグ2個 60
------------------
合計          1031円

まず、ニクロム線を伸ばして切ります。

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ニクロム線は、太く短いほど抵抗が少なく電流が流れ熱くなります。逆に細く、長いほど抵抗が大きく電流が流れず熱くなりません。この関係は覚えておくと良いでしょう。

私は、経験上、テスターで6Ωになるように測って切っています。ただし、ヒーターコントローラーを介さないで、直接12V電源につなげる場合は、6Ωでは熱すぎます。

6Ωの場合の電流 = 12V/6Ω = 2A
電力 = 12V × 2A = 24W

実際には熱くなると抵抗が増すので、24Wよりだいぶ低いですが、それでも熱すぎます。この値はあくまでもヒーターコントローラーを介する場合です。直結する場合はもっと抵抗が大きくなるように長く切るか、細いニクロム線を買います。

さて、理科のお勉強はこれくらいにして、製作です。2線コードを半分に裂き、片方をニクロム線に通していきます。

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そして、先端を半田付け。

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片方も半田付け。

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熱収縮チューブに入れて、ライターであぶり、引き締め。
さらに、両端にマジックタイをつけて出来上がり。

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主光学系とガイド鏡用の2つを作成して完了。

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簡単ですね。1031円で2つできてしまいました。

残り12,167円です。

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2008年7月21日 (月)

スイッチング電源の製作 その2

続きです。

まずは部品リスト

  • 1/4W金属皮膜抵抗 1KΩ [MF1/4CC1001F]  KOA  21円
  • 1/4W金属皮膜抵抗 5.1KΩ [MF1/4CC5101F]  KOA 21円
  • 降圧型電源レギュレータ [LM2596T-ADJ] ナショナルセミコンダクター 777円
  • ショットキーバリアダイオード [31DQ03L] 日本インター 126円
  • SNコイル [SN8S-300] NECトーキン 157円
  • 電解コンデンサ 1000μF 35V あまりもの
  • 電解コンデンサ 330μF 25V あまりもの
  • 追加抵抗 330Ω あまりもの
  • 基板 あまりもの

部品は、あまりもの以外は全てマルツパーツで購入しました。1000円ちょっとでできてしまいます。

抵抗は普通の抵抗でも良いですが、誤差の小さい金属皮膜抵抗にすると良いです。青い色の抵抗です。ショットキーダイオードは、前回、回路図に示したものがなかったので、耐圧、耐電流が高い上記のものにしました。何でも良いと思います。電解コンデンサは、耐圧の高いものにするようにデータシートに書かれています。

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部品はたったこれだけ。

製作上の注意

●レギュレータの端子は基板の穴のピッチと違うので、カットして、抵抗のリードの切れ端などで付け足します。あるいは、ラジペンで伸ばして、間隔を少し広げてやっても良いでしょう。同様にダイオードのリードも太く基板の穴に入らないので切って、リードをつけます。

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●回路図の太い線の部分は、配線を短く太くします。あまり神経質になる必要はありませんが、なるべく部品を密集させるようにすれば、配線も自然と短くなります。

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●GNDラインは線でつなげるというより、面でつなげます。あまったリード線を敷き詰めて、はんだをこってり流し込みました。(ちょっと汚い)

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完成

ちっちゃいので、コントローラの空いたスペースに入りました。秋月のキットだと大きいのでこうはいきません。

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レギュレータはケースに固定します。ケースに固定しない場合は放熱器が必要ですが、スイッチング電源なのでそれほど熱くなりません。

連続撮影試験をしましたが何の問題も発生しませんでした。これで完成です。スイッチング電源に変えて消費電流がだいぶ減りましたので、これでバッテリーも長持ちです。

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2008年7月18日 (金)

スイッチング電源の製作 その1

久々の「天文屋のための電子工作」です。今回は電源の話です。

実は、今カメラ用電源に秋月電子の可変安定化電源キットを使っているのですが、大きいのと、シリーズレギュレータなので、損失が大きいこと、レギュレータの放熱板がプラスなので漏電が心配なこと、いろいろありまして、スイッチングレギュレータに変えようと思っていたところなのです。

ほんとは、秋月電子のスイッチングレギュレータキットを買って簡単に済まそうと思ったのですが、これが大きい。コントローラ装置の中に入りそうもないので、自作することにしました。

●電源の基礎知識

降圧型の電源には2種類あります。

1 シリーズレギュレータ

 3端子レギュレータとも言います。特徴は回路が簡単なこと、発振しにくく安定しているなどがあります。

Power2

 ↑のよに3端子レギュレータとコンデンサだけで、できてしまいます。C2、C3は容量の小さいセラミックコンデンサで0.1μ~0.33μくらいですが、レギュレータの発振を抑えるのに使われます。C1、C4は入力、出力コンデンサで、電圧のサージやリップル(バラつき)をとるのに使われます。容量の大きい電解コンデンサなどが使われます。

 3端子レギュレータは、出力電圧固定型と可変型があります。固定型は電子回路でよく使われる3.3V、5V、9Vなどがあります。カメラ電源などは、中途半端な値ですから必然的に可変型を使うことになります。

 手っ取り早く済ませたいなら秋月電子のこのキットがお勧めで、私も現在使用しています。でも最初に述べたようにいろいろ問題があって、スイッチングレギュレータに変えようと思います。

 シリーズレギュレータは、損失が大きいこととそれに伴う熱対策が問題です。シリーズレギュレータは電圧降圧分がそっくりそのまま熱として放出されることが特徴です。

Power1

 今、12Vの電源を6Vに降圧するとします。消費電流は2Aとします。電力は電圧×電流ですから四角の面積が消費電力になります。これを6Vに降圧した場合、灰色の部分の電力が熱として放出されます。

 12Wというのは尋常ではない発熱量です。私が今使っている半田ごてが15Wですから。。。 これはオーバーな例としても、シリーズレギュレータの場合は放熱対策をしっかりしなければなりません。

 一般的には、電圧降下が大きい場合や消費電流が大きい場合はシリーズレギュレータは向きません。

 それから、これはスイッチングレギュレータにも言えることですが、入力電圧は、出力電圧の3Vくらい高い値でないといけません。つまり12V電源から10V電源を出すことはできません。もし、もしそうしたいなら、LDOと呼ばれる低ドロップ型の3端子レギュレータを選びます。

2 スイッチングレギュレータ

 スイッチングレギュレータは前回の「ヒーターコントローラ」で説明したPWM制御に発想が似ています。高速にON/OFFを繰り返すことにより出力電圧が一定になるように調整されます。

 損出が少ないこと(効率は70%~90%くらいです)が最大の特徴です。欠点は回路が多少複雑になることと、配線など注意しないと発振しやすくなることです。

 簡単に済ませたいなら秋月電子のキットを利用すればよいでしょう。こんなものが売っています。 しかし、今回は小型にしたかったので作ることにします。

3 LM2596

 今回スイッチングレギュレータとして利用したのは、ナショナルセミコンダクターのLM2596T-ADJです。最後の-ADJは可変型を意味します。最大出力電流は3Aで、カメラ電源としては十分です。

 メーカ推奨の回路図を以下に示します。データシートはこちら

データシートの詳しい解説にしたがって設計すると次のようになります。(出力7.5Vの場合)

Power6

 2つの抵抗の値によって、出力電圧が決まります。

Vout = 1.23(5K/1K + 1) = 7.38V

 ちょっと電圧が低くなるので、後から5Kオームの抵抗に330オームの抵抗を直列につなぎました。これで電圧は

Vout = 1.23(5.33K/1K + 1) = 7.79V

 EOSの電源としてはちょうどいいと思います。

 ダイオードは必ずしも1N5825でなくてもかまいませんが、耐圧の高いショットキーダイオードにします。

 コンデンサは容量だけではなく耐圧にも注意します。上図の値より大きければ問題ありません。

次回は製作編です。部品リストと入手先、製作上の注意点を書きます。

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2008年3月21日 (金)

天文屋のための電子工作

お月様が明るい。こんな暇な時期は楽しい電子工作で過ごそう。ということで新連載開始、満月期の暇つぶし企画です。というより、これ一回で終わってしまうかも知れない。

いちおう、予定しているのは、電源の製作。タイマーリモートシャッターの製作。モータードライブの製作などなどです。基本的に、よほど暇でない限りやりません。早くやれー!という方はコメントにて。

最初はヒーターコントローラーの製作です。実は、冷却D40作った時の部品が余ったので、それでこしらえたのですが、ちょい工作にはちょうど良いです。

基本的なこと

ヒーターの発熱量をコントロールするには、3つの方法があります。まず、可変抵抗(ボリューム)で抵抗値を変えることです。しかし、1Aとか流れますので、電子工作用の小さな可変抵抗は使えません。また発熱もしますので、損失が大きいです。

次は、電圧を変えることです。電圧可変式のスイッチング電源などで、電圧を変えます。スイッチング電源でない場合は損失が大きいので、普通はスイッチング電源を使います。私も以前はこの方式でした。しかし、いくつか問題があります。1 電圧範囲が限られること。2 装置が大きくなること。3 発熱量は電圧の2乗に比例しますのでリニアでないこと。4 スイッチング電源でも10~30%くらい損失があること。

そこで、これらの問題を解決したのがPWM制御です。モータなどのパワーコントロール系によく使われます。ようするに下図のようなパルスを出力して、ヒーターを高速でON/OFFさせるのです。ONの時間とOFFの時間を変えて、発熱量を調節します。理論上は、発熱量を0~100%の範囲で調整でき、しかもリニアです。損失も非常に少ないです。

Pwm1

欠点は、高速でON/OFFを繰り返しますので、ノイズの発生源になりえることです。ただ、これはスイッチング電源でも同じです。(電源については次回)

今回はタイマーIC555でパルスを発生させ、MOS FETと呼ばれる素子で、ヒータの電流をON/OFFします。

タイマーIC 555は、電子工作の王様です。子供向けの電子工作本に必ずといっていいほど出てきますね。応用しだいで、いろんなことができます。

回路図

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この回路は応用範囲が広く、CPUのファンコントローラとほぼ同じです。またそっくりそのままペルチェ素子のコントロールにも利用できます。難しいことはおいといて、とりあえずこの通り作れば動きます。LEDは出力に応じて明るさが変わります。

回路の説明

47μの電解コンデンサ。コンデンサは電気を貯めておくものですが、急激な電圧の変化をならす働きがあります。そのため電源投入時のサージやノイズをとることができます。電解コンデンサは極性があり、マイナスはマイナスのマークがあり、かつプラスのリードが長いです。

0.1μのコンデンサ。コンデンサは交流成分を通すためプラスとマイナスをショートするように入れると、交流成分つまりノイズを取ることができます。このような使い方をするコンデンサをパスコンといい。ICのそばに入れるのが基本です。0.1μのコンデンサは表面に104と書かれています。

555。 タイマーIC555は、コンデンサC1に充電と放電を繰り返すことにより三角波形を作り、内臓のコンパレータというものでデジタルパルスに変えます。充電時は右側のダイオードを通り充電されます。充電時間は抵抗RとコンデンサCの積に比例します。放電時は左側のダイオードを通り放電されます。放電時間もRとCの積に比例します。したがって、可変抵抗で充電時間、放電時間を変えることにより、ON/OFFの時間をコントロールできます。

ダイオード。役割は上記で説明したとおりで、一方向にしか電流を流さない特徴があります。極性がありますので注意してください。

LED。出力比率を見るためにLEDを挿入しました。LEDは電流を20mAくらい流すようにするのが基本です。LEDの両端の電圧は電流によらず一定でだいたい2Vくらいです。ですから、LEDと直列にある抵抗値は次のように求まります。

R = V / I = (12V-2V)/20mA = 500オーム

MOS FET。 ゲートと呼ばれる端子がだいたい4V以上になると、ドレイン、ソースという端子間に電流が流れます。この性質を使って、ヒータをON/OFFします。MOS FETはNチャンネル型とPチャンネル型の2種類ありますが、上の回路図なら必ずNチャンネルを使うようにしてください。

可変抵抗(ボリューム) ボリュームは指数関数的に変化するAカーブと直線的に変化するBカーブがあります。Bカーブを選択します。

製作

まず部品をそろえます。ほとんどすべて秋月電子で購入できると思います。

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最初は、基板のカットから

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次にケースの穴あけ。なに?ドリルがない? 綺麗な天体写真を撮りたいならドリルの一つや二つ。。。

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次に基板の製作ですが、最初に抵抗などのリードの切れ端で電源ラインを配線します。電源ラインのレイアウトが良いとその後の結線が楽になります。ここは経験ですね。

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電源ラインができたら後は部品を取り付けていきます。MOS FETのリードは根元から曲げないように。

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裏側はこんな感じ。

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ケースに入れて、ボリュームやLEDをつけます。

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完成です。

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実はコンデンサC1の容量を一桁間違えてパルス周期が29Hzになってしまって、LEDが点滅しているのが分かるようになってしまいました。ほんとは288Hzにしたかったのですが、288Hzなら点滅は分からないと思います。でも点滅が分かった方が分かりやすくてよいかも。

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2008年3月20日 (木)

暇なもんで

PWM制御のヒーターコントローラを作ってみました。

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出力0~100%、効率ほぼ100%、リニア、超小型。これはお勧めです。

製作記は明日アップします。大したもんでないけど。

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