経緯台で天体写真

2015年9月23日 (水)

「経緯台で天体写真」FTSの恩恵

久々の経緯台シリーズです。

経緯台の方も少しずつですが、進んでいます。というか、スタンドアローンオートガイダーあれを進化させて、経緯台のコントローラに使用したい思っています。ですから同時進行というのが正しいかな。

今日は、フリートラッキングシステム(FTS)の恩恵についてちょっと。FTSは何も経緯台に限った話ではないです。赤道儀でもFTSを使うことができます。FTSは2軸の平行移動と、1軸の回転でもって、どのような状態でも、星を追尾することができます。

写野の回転ができるので、今までにない撮影が可能になります。一番分かりやすいのは、縦横構図の自動切換えです。プログラム撮影で縦横の切り替えも行えます。もちろん、縦横だけでなく、もっと絶妙な構図も可能です。

そして、私が一番うれしいと思うのは、完璧なモザイク結合ができることです。

普通、赤道儀でモザイクをやると、こうなってしまいます。

1509231_2北向きほど顕著です。ところが、FTSを効かせれば、モザイクも、こんな完璧になります。

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あとは、ディザーガイドで、平行移動だけではなく、回転も入れることができます。周期的なノイズに対応できます。また、あまりやらないとおもうけど、写野を180°回転させての合成も可能。このようにFTSは単に経緯台で撮影ができるというだけでなく、色々な撮影スタイルをとることが可能になるんです。

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2015年8月 2日 (日)

「経緯台で天体写真」傾斜の問題

SS-oneの延長シャフトの申し込みは明日日曜日までとなっています。お忘れのないように。さて、経緯台の話です。

前回、ローテーターの話をしました。経緯台とローテーターがあれば、天体の追尾ができるかと言うと、まだ足りないものがあります。実はあまり注目されていませんが、これは重要な問題です。

経緯台追尾の場合、写野は次第に回転していきますので、カメラの写野が経緯台の垂直、水平軸に必ず平行または垂直とは限りません。

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図で言うところの角度θを知る必要があります。これが分からないと、オートガイドでモーターの回転数を計算できません。

θを知る方法としては以下の方法が考えられます。

1 ローテーターにエンコーダーをつける
2 ローテーターを水平の位置で原点をとり、ローテーターのモーターのパルス数をカウントする
3 傾斜センサーを使う。

1,2の方法は正確ですが、どこかでアライメントしなければなりません。FTS(フリートラッキングシステム)を目指す立場としてはあまりよくありません。そこでアライメントが不要な傾斜センサーを採用することにします。

傾斜センサーは2つ必要です。なぜなら、経緯台の水平軸が必ず水平とは限らないからです。つまり傾斜センサーは経緯台の水平面に一つ。カメラの水平方向に一つ必要です。

結局、経緯台でFTSを実現するには、電動経緯台とローテーターと2つの傾斜センサーが必要になります。

また、コントローラは2つの傾斜センサーの入力と、3つのモーターを制御できなければなりません。

 

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2015年7月27日 (月)

「経緯台で天体写真」ローテーターの原理

今日は経緯台追尾の肝であるローテーターについてのお話です。

ご存知のように、経緯台で星を追尾すると、写野が回転します。それをキャンセルするのがローテーターです。

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ローテーターには2種類あって、像を回転させるイメージローテーターと、撮影装置全体を回転させるインスツルメントローテーターです。大きい天文台では撮影装置全体を回転させるのは大変なのでイメージローテーターが使われているようです。

民生品ではミードがフィールド・デ・ローテーターという装置を販売していたようですが、あまり精度が良くなく普及しなかったみたいです。

さて、私のローテーターは撮影装置を回転させるインスツルメントローテーターです。それに2ポートのオフアキシスガイダーをつけています。下図のように2つの星の動きでもって星を追尾します。

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ここで星を追尾する原理を紹介します。

まず、2つの星の重心でもってガイドします。そうるとやがて写野が回転してきます。回転の中心はガイド点、つまり2星の重心です。

1507262ここで、ローテーターの出番です。回転角検出し、ローテーターを回転させます。しかし、ここで問題が発生します。写野の回転中心と、機械的な回転中心が必ずしも一致しないことです。

1507263写野の回転中心と、機械的な回転中心が一致しない場合は回転によって、重心が移動してしまいます。どのくらい移動するか見積もってみましょう。
そのためには、2つの星の関係を下図のように並行移動してみましょう。

1507264角度θを挟む三角形は相似形ですから、星の移動距離と重心の移動距離(青の矢印)との比は、図でm:nになります。

この図から明らかなように、仮にm:n=10:1くらいと仮定すれば、星の移動距離はせいぜい1ピクセルですから、重心の移動距離は0.1ピクセル程度ですぐ修正信号を出せば撮影には影響しないレベルです。

ここで影響が出ないレベルというのは、常に星の動きを見てガイドしているから言えることです。0.1ピクセルでも積み重なれば大きくなります。経緯台のノータチガイドや、ミードのローテータのように計算だけで、回転を制御しようとすると、このずれが無視できなくなります。今まで経緯台の追尾が難しかったのはこのような理由が大きいと思われます。

最後にローテーターにどれだけの回転分解能が必要か見積もってみます。

フルサイズの場合、回転中心から20mmくらいの点を考えれば十分でしょう。つまり半径20mmの円周にどれだけのピクセルがあるか計算すれば、それがそのまま分解能になります。

1ピクセル5ミクロンとすれば、分解能はおよそ1/25,000になります。角度にすれば0.014度です。

これはパルスモーターで制御する場合、余裕で実現できる値です。ただ機械的な滑らかさが0.014度の精度であるかどうかはわかりません。ベアリングが必要になるかも知れません。

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2015年7月23日 (木)

「経緯台で天体写真」イントロダクション

新企画、経緯台で天体写真の2回目。今日はこれからどんなことをやるのか、簡単に説明していきたいと思います。

はじめは理論的な話が中心になります。また、思いついたアイデアなど、理論も含めて、このブログで発表していきたいと思います。理論的な話はつまらないかもしれません。ただ、それでもここに詳細に、ときにはうんざりするほど書きたいと思います。

それには、理由があります。特許の問題です。私はこの企画で特許を取ろうとは思いません。また、自分と同じアイデアを他者が特許取得するのもまったくかまいません。ただ、私のアイデアなのに、私自身が使えなくなるのだけは避けなければいけません。

それには、特許を出願するのが一番です。いわゆる防衛特許です。しかし、特許文書を書くのは面倒ですし、お金もかかります。それよりもインターネットで発表するのが手っ取り早いです。インターネットで発表すれば、特許の要件である新規性はなくなり、自分自身でさえ、特許取得ができなくなります。

まぁ、そんなことなので、理論的な話に興味のない人はどんどんスルーしてもらってかまいません。

さて、経緯台で天体写真を撮るための方法、つまり追尾方法ですが、以下の2通りの方法が考えられます。

1 望遠鏡の向きから、星の移動速度、方向、および写野の回転方向を計算で出し、追尾する。いわゆる、経緯台のノータチガイドです。これに2台のガイドカメラによる実写によりずれを補正する

2 2台のカメラにより、星の動きをリアルタイムに検出し、追尾する。

1の方法の方が、技術的には簡単そうです。ただ、これをするには経緯台を少なくとも2星でアライメントしなければなりません。これは面倒です。

私が目指すのは2の方法です。これをFTS(フリー・トラッキング・システム)と呼ぶことにします。

FTSなら、経緯台を置けばすぐ撮れることになります。水平を出す必要もありません。また、応用範囲も広く、経緯台でなくてもかまいません。極軸を適当に合わせた赤道儀や、極軸を合わせにくいフォーク式赤道儀などにも応用できます。

とにかくどんな架台であっても置けばすぐ撮れる。これが理想です。

ただ、実際は1と2の中間の方式になると思います。

つまり、最初はFTSで追尾を始めるのですが、星の動きを学習させるのです。そしてある程度動きを予測しながら、誤差の分だけ修正していくことになります。

で、リアルタイムで星の動きを追尾できるのでしょうか?実現可能かどうかちょっと見積もってみます。

焦点距離500mmでEOS6Dで南の星を撮るとします。そうすると、星は画角の端から端まで16分で横切ることになります。これは1秒あたり6ピクセルになります。仮に1/10でガイドカメラをキャプチャし、修正信号を出せば、1ピクセル以内に収めることができます。

露出1/10でどの方向に向けてもガイド星を見つけるのは以前は無理でした。しかし、現在なら可能です。すでにSS-oneオートガイダーで実証済みです。SS-oneオートガイダーでは1/8秒でもガイド星が十分写ることを確認しています。

今後、もっと感度の高いCMOSセンサーも出てくるでしょう。そうすれば、さらに1/20とか1/30でガイド信号を出すことも可能になります。もちろん学習機能も働きますので、なおさら余裕です。現在の技術ならFTSも十分可能なのです。

今日は、このあたりで終わりにしておきます。次回はローテーターについてお話します。

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2015年7月14日 (火)

「経緯台で天体写真」新企画

SS-oneプロジェクトが一段落したところで、ほんまかの次の計画発表です。

それは、これ。

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FSQ-85ED+TG-L経緯台。FSQ-85EDは今日届きました。ずっしり重いです。この赤帯がなんとも言えません。タカハシのFSQやイプシロンは天文屋なら一度は使ってみたい筒。

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さて、そんなFSQを経緯台に乗せて、のんびり眼視観望ではなく、本気で天体写真を撮ろうという企画。それが「経緯台で天体写真」。

ご存知のように経緯台で天体を追尾すると写野が回転します。それをキャンセルするのが、このローテーターと、デュアルオフアキ。

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やっぱ赤道儀は重いです。足腰の弱い軟弱天文屋には、もう経緯台しかありません。

すばる望遠鏡が経緯台なのは有名な話ですが、今や65cmくらいの天文台でも経緯台が使われる時代です。天文台にできて、アマチュア用望遠鏡にできない理由はないと思います。私はかなり勝算があります。これから経緯台の時代がきます。ミードやセレスロンあたりは必至で研究してるでしょうね。

さて、いちおう2年後にはそれなりに商品化したいです。対象の鏡筒としてはFSQ-106EDとFSQ-85EDを考えています。シュミカセとか焦点距離が長くなるので、第二ステージ以降の課題ですね。

また赤道儀は極軸合わせとかセッティングが面倒ですが、この経緯台は置けばすぐ撮れる経緯台を目指します。車から出してポイと置けばすぐ撮れる。または眼視観望中心で良ければ写真を撮るこんな使い方もいいです。

とりあえずは、次のスケジュールで進めたいと思います。
1 自動導入経緯台として使えるようにする
2 とりあえず、回転を無視して追尾する
3 コントローラの製作
4 ローテーターの導入


SS-oneの残った仕事を優先させながら、こっちも頑張っていこうと思います。それではご期待ください。

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