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天体写真の基礎知識

2018年3月12日 (月)

天体写真と構図

風景写真など一般の写真を撮る場合は、普通はカメラを横構図の場合は水平にします。縦構図の場合は垂直にします。手持ちの場合、実はこれがけっこう難しくて良く失敗するんですが、最近のカメラは水準器を内蔵しているので、あまり失敗しなくなりました。

水平がちゃんととれていない写真は、それが上手に狙ったもの以外は大抵、へたくそな写真に見えます。

天体写真でも同じことが言えます。天体写真で、「水平/垂直」に相当するのが、「赤経線/赤緯線」です。これに沿った写真でないと、大抵、へたくそに見えます。というのは、我々天文ファンは、「赤経線/赤緯線」に沿った写真に見慣れているので、傾いていると違和感を感じます。その違和感が良い方へ作用すれば良いのですが、風景写真と同様、大抵はマイナスのバイアスがかかります。

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上の作例は左側が正しい構図です。

天体写真は非常な努力を払って完成する作品です。それなのに簡単に直せる構図で悪く見られるのはもったいない話です。よほど腕に自信がある場合を除いて、ぜひこのルールは守ってもらいたいです。

では、どうすればこの決まりを守れるのか。説明します。

赤経線/赤緯線
赤経線は天の座標で星の日周運動と平行な線です。赤緯線はそれに直角な線です。

ステラナビゲーターでは「経緯線」->「赤経・赤緯」でその線を表示させることができます。

正しい構図

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正しい構図

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良くない構図

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正しい構図にするのは実は簡単です。

1 カメラレンズの場合
カメラの場合は赤道儀に自由雲台など使わず、そのまま取り付ければOKです。ただ、直だと、縦横の構図の切り替えが出来ないので、Lブラケットを使うと良いです。

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自由雲台は、構図がとりにくいだけでなく、バランスも崩しやすく、天体写真では、以下の場合を除いて使うべきではありません。

●1軸のポタ赤の場合(ドイツ式でない)
●地上の風景を入れる場合

自由雲台は使うべきでないというか、はっきり言って、使ってはいけません。

2 屈折望遠鏡の場合
赤道儀の鏡筒取付部に対して、水平垂直にします。

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3 反射望遠鏡の場合
鏡筒に対して平行またはそれに直角にします。
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たった、これだけ気を使うだけで、天体写真が、素人ではなくちょっと「分かってる人」が撮った写真に見えるから、効果絶大です。ぜひ実践してみてください。

補足
もうひとつルールを上げるとすれば、北側(北極星に近い方)を上に向けるという決まりがあります。天の赤道に近い対象の場合は、これは守った方が良いでしょう。ただ、北極星に近い対象の場合は必ずしもこの限りでない場合があります。たとえば、カシオペアなどは、北を上にすると、北極星の下側を通る姿であり、あまり肉眼ではお目にかからない姿で、逆に違和感を感じる場合があります。この決まりは柔軟に考えていいと思います。

2018年3月 1日 (木)

天体写真とノイズ

天体写真はノイズとの戦いです。

ノイズとは、簡単に言ってしまえば「ザラザラ」です。

しかし、ここで疑問がおきます。一般の写真とか、風景写真とか、奇麗に撮れますよね。ザラザラなんて皆無です。なんで天体写真だけ「ザラザラ」が問題になるのでしょうか? 理由はいくつかあります。

1 非常に高感度で撮影する。(ISO1600とかISO3200とか)
2 非常に露出時間が長い。(1分~10分)
3 非常に強調処理する。

最近のデジカメは進歩してるので、高感度長時間露出でもそれほどノイズは目立ちません。ところが3が重要なのです。

普通にバラ星雲を露出数分で撮影するとこんな感じです。

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ザラザラはそんな気にならないですね。でも肝心なバラ星雲が写っていません。星雲の光は非常に淡い光なのでこれくらいしか写らないのです。そこで、画像処理によって星雲の光を強調してやるのが強調処理です。そうするとこうなります。

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大変身ですね。

ところが、ノイズを気にしないで、ただ強調しただけでは、こうなってしまうのです。

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良く見てください。ザラザラですね。ここで初めてノイズが問題になってくるのです。

ノイズを低減する方法はいくつかありますが、一番効果が絶大なのは、「加算平均コンポジット」です。

これは同じ被写体を同条件で、何枚も何十枚も撮って、重ね合わせて平均してやるのです。下の画像を見てください。これは2枚の画像を加算平均コンポジットした場合の概念図です。

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星雲の光のような「本当の光」は同じところに同じように記録されます。一方、ノイズはランダムに出るので、加算して平均すれば星の光はそのままですが、ノイズのレベルは下がっていきます。非常にたくさんの画像を加算平均コンポジットすればどんどんノイズが減っていきます。

しかし、同じ写真を何枚も撮ることから、天体写真を撮るには、非常に時間がかかることが分かります。1時間2時間は当たり前です。一対象に5時間とか10時間かける人もいます。

それでは、加算平均コンポジットにどれだけ効果があるか見てみましょう。下の画像ですが、最初の画像を多少トリミングしています。もうひとつ細工がしてあって、左半分は一枚の画像ですが、右半分は、50枚コンポジットしています。

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強調してなければそれほど違いを感じません。バラ星雲が良く見えるように強調処理してみましょう。

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どうですか? これほど違いが出てきます。加算平均コンポジットって、重要なのが分かってもらえると思います。

●ダーク減算は必要無し
さて、天体写真では、古くからダーク減算というノイズを軽減する手法が行われています。しかし、最近のデジカメは進歩しているので、ダーク減算に関してはしなくて良いでしょう。私自身、デジカメに関する限りダーク減算はしていません。

もちろん、やればやっただけの効果はあります。ただ、他にやるべきことはいっぱいあります。ダーク撮影に時間をかけるなら、構図やピント合わせを念入りにやった方が、よっぽど奇麗な写真に仕上げらます。

ピントも構図もフラットもちゃんと出来るようになり、まだ不満なら最後にダーク減算をやればいいでしょう。そうなったら、あなたは相当な腕前になってるはずです。

●カメラ内蔵のノイズ低減処理は有効
天体写真のノイズ低減処理は、加算平均コンポジットがほぼすべてです。ただ、入門者が1対象撮るのに数時間かけるのはどうかと思います。コンポジットは必要としてもできるだけ枚数は少なくして、いろいろな対象を撮った方が楽しいですし、上達も早いです。

そこで有効なのが、カメラが内蔵機能として持っている、「ノイズリダクション」機能です。

一般的に天体写真では「ノイズリダクション」は使いません、これを使うと、解像度が落ちたり、いろいろ弊害が出るので、天体写真で「ノイズリダクション」を使うことはしません。

しかし、解像度の低下が気になるレベルに達するのは相当な経験を積んだ後です。ですから、最初はあまり細かいことにとらわれず、たくさんの対象を撮ることが重要と思います。このブログでも最初は「ノイズリダクション」を有効にして写真を撮っていきます。

2018年2月23日 (金)

「天体写真とカメラ」および本ブログお薦めカメラ

これから天体写真を撮ってみたいという方もいると思います。そこで天体写真を撮れるカメラについてお話ししたいと思います。と同時に私がお薦めするカメラを紹介します。

まず、どんなカメラで天体写真が撮れるか、分類してみました。

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概ねこの三種類に分けられると思います。この他にコンデジやスマフォのカメラでも分野を制限すれば可能です。ただ、このブログの趣旨としては、一時的に天体写真を撮るのではなく、趣味として長く天体を続けていく方を対象としていますので、コンデジやスマフォは除外させていただきます。

天文専用カメラは、
天文専用に開発されたカメラです。基本的にパソコンと接続してパソコンから操作します。価格も高く(最近のCMOSカメラは安くなった)撮った後の画像処理も難しいことから、入門者にはお薦めできません。

入門者にお薦めできるのは、扱い易い一眼カメラです。デジタル一眼レフとミラーレスがあります。天文用途で考えた場合、一番大きな違いは、光学ファインダーがあるかどうかです。覗けば星がある程度見える光学ファインダーはやはりあると便利です。オリオン大星雲やアンドロメダ大星雲もファインダーをのぞけば見えます。

一方、ミラーレスの背面液晶のライブビューはほとんど、明るい星を覗いて、見えません。ただ軽量であることなど、長所もあります。

ところで、天文用カメラも含めて、すべてのデジタルカメラには画像センサーがあり、センサーサイズをいろいろあります。有名なところでは、大きい順に

1 フルサイズ
2 APS-C
3 マイクロフォーサーズ

センサーサイズは天体写真では特に重要です。フルサイズとAPS-Cのセンサーサイズを比較してみましょう。

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左がフルサイズで右がAPS-Cです。フルサイズの方がかなり大きいですね。ではそれぞれぞ特徴を以下の図を見ながら考えてみましょう。

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センサー上には望遠鏡が作りだした像が写ります。同じ望遠鏡なら、フルサイズだろうが、APS-Cだろうが、同じ大きさで写るはずです。いっぽう、撮った写真は印刷にしろ、ネットに掲載するにしろ、一定の大きさに引きのばします。

そうすると、結果的には、センサーサイズの小さい方が拡大率が高くなります。フルサイズの方が拡大率が低いのです。

一般的には、拡大率の低いフルサイズの方が、粗が目立たないので高画質です。ですから、天体写真でも当然、高画質を求めるなら、フルサイズが有利です。

しかし、欠点もあります。拡大率が低いので、APS-Cと同じ迫力で星雲を写そうとすれば、より焦点距離の長い望遠鏡が必要です。赤道儀も大きなものが必要です。また、写る範囲が広いことから、望遠鏡やカメラレンズに要求される性能もあがります。

つまりフルサイズを生かそうとするなら、撮影システム全体が、より大きく高価なものとなってきます。

赤い星雲の写りと改造デジカメ
天体写真の撮影対象になる星雲には、赤い星雲が非常に多いです。ところがこの赤い星雲が出す光(Hα線)はデジタルカメラのセンサー前面に取り付けられた赤外カットフィルターが通さないため、赤い星雲の写りが非常に悪いのです。

そこで天文マニアのほとんどは、この赤外カットフィルターを取り除き、Hα線を通す赤外カットフィルターに交換する改造を天文ショップなどを通して普通に行っています。

改造すると、一般の写真は赤っぽくかぶって撮れません。またメーカーの保証も受けられなくなります。ですから事実上、天文専用カメラになります。

さて、このように様々な事情がある天体カメラですが、私が入門者向けに何か一台お薦めするとしたら、以下のカメラをお薦めします。

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フジフィルムのXシリーズのミラーレスカメラです。これはX-A1ですが、他のXシリーズでも良いです。なぜか。

実はフジフィルムのXシリーズのカメラは改造しなくても赤い星雲が良く写るのです。
このX-A1の場合は、中古で15,000円~20,000円程度で買えます。安いのも魅力です。

安く手に入り、改造しなくても良いということで入門者には特にお薦めです。
XシリーズはすべてAPS-Cのカメラです。ミラーレスなので、光学ファインダーがないのは欠点です。導入や構図合わせで不利ですが、そこは他の方法で補うしかありません。このブログでもそこはしっかり説明していきたいと思います。

次点のお薦めカメラとしては、ある程度金額がかかってもよく、将来改造することも承知ならCanon EOS Kissシリーズがお薦めです。天体写真で、広く使われている定番カメラです。

最後にX-A1で撮った天体写真の作例を掲載します。15,000円のカメラでこれだけ撮れます。

バラ星雲
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M8(干潟星雲、大きい方)とM20
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2018年2月 4日 (日)

望遠鏡のスペック

望遠鏡の原理は簡単ではレンズで光を集めて一点に集めます。

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望遠鏡には屈折望遠鏡や反射望遠鏡がありますが、レンズで光を集めるか、鏡で光を集めるかの違いで、根本的な違いはありません。また、カメラのレンズもまったく同じ原理です。

望遠鏡のスペックというと倍率を思い浮かべるかも知れませんが、倍率はいろいろ変えられるのであまり気にしなくて良いです。重要なのは上図に出てきた3つの値です。

口径
レンズの直径です。大きいほど光を多く集められるので高性能です。ただ大きいほど、高価で重くなります。

焦点距離
レンズが光を一点に集めるまでの距離です。写真撮影では、この焦点距離で写る大きさが決まってしまうので、特に重要で、撮影する天体に合わせて適切な焦点距離の範囲が決まります。

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F値
焦点距離を口径で割った数値です。数値が小さいほど明るく、特に撮影では有利です。
カメラレンズではおなじみの値です。
F値は、口径が大きいほど、また焦点距離が短いほど小さく、つまり明るくなり有利です。
ただし、上図のように焦点距離は撮る対象によりほぼ決まるので、F値を明るくするには、口径を大きくするしかありません。つまり大きな望遠鏡が有利です。

ちなみにF値の目安ですが、星座や星雲星団の写真の場合は、F6以下、出来ればF4くらいが理想ですが、F値が小さいと高価になるので、いろいろ悩ましいところです。月や惑星の場合は明るいのでF値がもっと大きくF10以上でも大丈夫です。



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